日常の病棟ではこのような患者は山ほどいるので、これで何か異常を指摘しろといわれてもむずかしいでしょう。でも、この患者の体は異常なのです。どうすれば異常を見つけることができるでしょうか。 まずはこの症例、バイタルサインを測定しているように見えますが、実際にわかっているバイタルサインは「血圧」と「体温」だけです。現在の自動血圧計は「脈拍」も表示されるので記録はつけますが、記録しても実質スルーされることが多く、バイタルサインの情報が少なすぎるのです。単に項目数だけの問題ではなく、各バイタルサインの中身も問題になります。この症例の正確なバイタルサインは、次のようになります。 このように、きちんとバイタルサインをとり、患者のふだんのバイタルサインと比較すると、本症例はバイタルサイン6項目中、実に5項目に異常が認められます。この患者は「向精神薬増量⇒尿閉⇒尿路感染⇒敗血症性ショック」になっていたのです。各バイタルサインのどこが異常なのかは、本書を読み進めていけば理解できるようになります。①血圧(収縮期/拡張期) ふだん150/90mmHg前後。本日110/60mmHg⇒異常です②脈拍 ふだん60回/分前後。本日114回/分⇒異常です③呼吸 ふだん10~14回/分。本日23回/分⇒異常です④体温 ふだん35.2℃前後。本日36.6℃⇒異常です⑤ 意識レベル ふだんは意識清明。本日JCSⅠ-2(見当識障害あり)⇒異常です⑥(経皮動脈血)酸素飽和度(SpO2) ふだん97~99%。本日98%⇒正常ですバイタルサインってむずかしい?そんなことないわよ。あたしといっしょに勉強しようよ!9精神科ならではのバイタルサイン
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