プロローグ11111111111115CHAPTER1重要な人物や。彼の著作『人体の諸部分の有用性』は有名やな。ただ、ガレノスは当時としては非常にすぐれた学者やったんやけど、重大な間違いもしてたんや。間違い!? へ~、僕みたいですね。あ、すみません、おこがましいですね。その間違いいうのは、血液循環の概念をもっとらんかったことや。要はな、彼の生命に関する根源的原理は「精気(生気)」、つまりプネウマやったんや。せいき? プネウマ? なんか、宗教みたいですね。現代っ子はそない思うわな。 脳の中の動物精気が運動・知覚・感覚を、心臓の生命精気が血液と体温を、肝臓にある自然精気が栄養の摂取と代謝を司る、つまり、精気には3種類あってこれらが生命の根源と考えたわけや。驚くなかれ、この精気の説は近代はじめまで持ち続けられとったんや。そうした誤りを正すことが近代医学の出発点になったわけね。そういうこっちゃ。で、時代はどんどん進んで中世を下った12~13世紀。この頃になると、知識への関心が進んで、動植物を含む百科全書的な書物が編へん纂さんされたんやな。やがてルネサンス芸術の写実的精神と相あい伴ともなって、植物や動物の実証的観察も盛んになるんや。あ~、この頃にレオナルド・ダ・ヴィンチが登場するわけだ。そうや。彼は15世紀後半から約30体の人体を解剖して、膨大な人体図を描いたんやな。知ってます。あの両手を広げた…、『ウィトルウィウス的人体図』ね(図1.1-1)。有名よね。誰しも一度は目にしたことがあるんじゃない。ダ・ヴィンチ
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