基礎助産学ⅠⅡ 女性の健康に関する支援11難易度…体重減少性無月経Ⅰ-Ⅱ-2 女性のライフサイクルと健康課題への支援A 思春期・成熟期女性に特有な健康課題★問4 16歳の高校生。身長165cm。最近6か月で体重が56kgから41kgに減少した。6か月間の無月経を主訴に婦人科に来院した。以前は月経痛が強かったため、本人は現状をあまり心配していないが、母親が心配をして一緒に来院している。性交経験はない。 正しいのはどれか。1.本人の自覚が少ないため、常に母親と一緒に問診や説明を行う。2.ホルモン薬投与により月経誘導を行う。3.心療内科を受診させる。4.月経回復後に月経痛が強い場合には子宮内膜症を疑う。標準体重(kg)は、身長(m)×身長(m)×22(女性は21を用いる場合もある)で算出する。身長165cmでは59.9kgで、本症例は標準体重の68.4%である。1.産婦人科を受診する思春期女性には、母親が同席することが多い。しかし、家族同席では十分に話ができないことも考え(たとえば、性交経験など)、家族を退席させてから問診を行う配慮も重要である。2 .思春期女性の無月経は、2~3か月に1回程度の月経誘導を行う。[第1度]無月経では黄体ホルモン薬を周期の後半に投与する[ゲスターゲン療法(Holmstrom〈ホルムストロム〉治療)]を、[第2度]無月経では周期前半に卵胞ホルモン薬を投与し、周期後半には卵胞ホルモン薬と黄体ホルモン薬を併用する[Kaufmann〈カウフマン〉治療]を行う。標準体重の70%を下回る体重減少の場合には、消退出血による[貧血]の重症化や体力の消耗を考えて、月経誘導を行うべきではない。最初に行う治療は体重の回復であり、標準体重の[90]%を目標に行う。体重回復後に、性ステロイドの補充療法を行い、月経周期の回復を促す。3 .本事例は[神経性食欲不振症](anorexia nervosa:AN)の可能性が高い。体重や体型の歪んだイメージが根底にある摂食障害なので、治療を心療内科などの専門医で行うことは必須である。4.思春期の月経痛の原因には腹膜病変を中心とした[子宮内膜症]がかなり多く、月経困難症や[慢性骨盤痛]を訴える女性の25~73%に存在する。痛みの管理だけでなく、将来の妊にん孕よう性せいを考えた治療が必要であり、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)のような鎮痛薬以外に、[低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬]の使用も推奨されている。 ▶答え[3]神経性食欲不振症と体重減少性無月経を鑑別する。基本
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