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 このたびは本書を手に取っていただき、ありがとうございます。本書を手に取っていただいた方のほとんどは、公認心理師国家試験の合格、そして公認心理師として活躍することを目指していると思います。みなさまのご健闘とご活躍を祈念しています。 2015 年9 月に公認心理師法が制定され、2017 年9 月に施行されました。公認心理師は、心理職としては初めての、そして心理学界の念願であった国家資格です。2018 年から国家試験が始まり、2019年8月に行われた第2回国家試験までの合格者数は、臨床心理士の数を超えました。その多くが公認心理師として登録を受け、公認心理師として活躍しています。合格された方々の後に続けと、公認心理師国家試験に向けて勉強を始めると、すぐに「絶望」を感じるかもしれません。おそらく、その絶望は、公認心理師国家試験の幅広い出題範囲によるものだと思います。臨床心理学、知覚・認知心理学、発達心理学、社会心理学のような基礎心理学の知識はもちろん、実験や研究法、統計に関する知識、人体の構造や疾患、精神医学、薬学など医療系の知識、心理検査などアセスメントや心理療法に関する知識、そして、各種法律・制度の知識が問われます。法律・制度については、法律の条文からだけでなく、法律に基づいた手引きやガイドラインからも出題され、制度も毎年のように改定されています。しかも、これらの知識が単独ではなく、組み合わされて出題されるため、丸暗記ではなく、それぞれの知識を関連させて習得していくことが求められ、実に高度な学びが必要となります。 もちろんこのような学びをするためには、一つひとつの事項についてテキストなどをもとにしっかりと覚えていくことが基本です。公認心理師に関しては、すでに多くのテキストが出版され、これからも出版されていくことでしょう。公認心理師試験対策を謳った○×形式の肢別問題集も、基礎的な知識の習得を確認する上では有用だと思います。ですが、これらでの学びだけでは、それぞれの知識を関連させて習得することが十分にはできません。 本書は、これまでに行われた国家試験を徹底的に分析し、その出題傾向や出題パターンにできるだけ近づけた予想問題を200 問掲載しています。また、その問題に関する解説も掲載し、なぜこの答えが正しいのかがわかるようになっています。さらに、冒頭に呈示している予想問題と関連する過去問題や関連問題も掲載しています。これらを繰り返し解き、読むことで、バラバラに習得された基礎的な知識が、関連づけられ定着すると考えています。 本書は「問題集」であり、その役目は本書を手に取っていただいた方が国家試験に合格することに貢献することだと思います。ですが、みなさまが合格されたからといって、本書の役目は終わりではありません。公認心理師の義務のひとつに「資質向上の責務」があります( 公認心理師法43 条)。公認心理師は更新制度がありませんので、一度登録されたら、基本的にはずっと公認心理師です。しかし、日々の対人援助に尽力するあまり、自分の専門領域に関する知識や技術はより高められ、また更新されていきますが、どうしても専門としない領域に関する知識は、試験の後、どんどん忘れ去っていってしまいます。そこで、試験が終わっても、たまに本書を開いていただき、自分が専門としない知識の再確認をしていただければと思います。また、法律や制度は変わっていきますので、その変更点も書き込んでいただきたいと思います。本書は「問題集」でありますが、できればずっと手元においていただき、みなさまの知識保持と資質向上に役立てていただければと思います。2020年1月うっすらと雪化粧した遠くの山々を眺めて和光大学 髙坂康雅はじめに

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