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 今でこそ,先進国の仲間入りをしている日本であるが,つい100年ほど前までは,現在の途上国よりも健康水準は低かった. ある国や地域の総合的な健康水準を表す指標として,乳児死亡率がある.乳児は社会の中で最も弱い存在と考えられ,医療や生活環境の劣悪さがその死亡として端的に表れるからである.1920(大正9)年の日本の乳児死亡率は出生1,000につき165.7であった.図1-1の1935(昭和10)年以降の日本の乳児死亡率の年次推移(緑色のグラフ)を見ると,第二次世界大戦後,急激に改善していることがわかる.ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)等の統計1)で,世界各国の2018(平成30)年の乳児死亡率を見ると,中央アフリカ共和国が84,シエラレオネが78など,政情不安な国で際立って高いが,それでも100年前の日本より低い.少なくとも乳児死亡率でみる限り,100年前の日本はまぎれもない途上国であった. 次に,図1-1で平均寿命を見てみよう.平均寿命(0歳時平均余命)は,その年の年齢別死亡率がこのままずっと続くとしたら,その年に生まれた乳児が平均して何歳まで生きるかを表したもので,その年のすべての年齢層の死亡率を反映した総合的な健康指標である.終戦直後は男女とも50歳程度であったが,現在では,男性は81歳,女性は87歳を超えている.なぜこのように急激に改善したのであろうか. 第一には,平和な世の中が続き,経済が発展して,人々の暮らしが豊かになっていったことが挙げられるだろう.戦争は,直接戦う兵士のみならず,子どもや高齢者を 1公衆衛生改善の歩み 1昔の日本はどんな国だったのか 2どうしてこんなによくなったのか乳児死亡率生後1年未満の子どもの死亡数をその年の出生数で割って,1,000をかけたもの.平均寿命2019(令和元)年現在の日本の平均寿命は,男性81.41歳,女性87.45歳.男女共に世界の最長寿国の一つになっている.図1-1_わが国の乳児死亡率と平均寿命の年次推移1935404550556065707580859095200005101519010203040506070厚生労働省「人口動態統計」「令和元年簡易生命表」より8090100110120(年)(人)(歳)乳児死亡率(出生千対)1944~46年:戦災等により乳児死亡率のデータなし60.113.17.53.21.94045505560657075808590平均寿命62.9759.5774.6681.9084.6087.4581.4169.3175.9277.72男性平均寿命乳児死亡率女性平均寿命図1-1●日本の乳児死亡率と平均寿命の年次推移18

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