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ばれる親類相互の助け合いや地域の助け合いが豊かにあったし,労働力が集中的に必要な場合等の相互扶助組織である「結ゆい」といった助け合い組織もあった. しかしながら,社会の中心的産業が,農業から生産手段を自由に移動させられる工業に変わると,人口移動も激しくなり,生活圏域も遠距離通勤によって拡大していく中で,地域での助け合いや家族・親類による助け合いには限界が生じてきた.例えば,核家族で,両親が働いている場合,子育ては大変深刻な問題となる.以前ならば,大家族の中で,あるいは地域に,親の保育機能を代替してくれる人がいた.しかしながら,故郷を離れ,都市に働きに出ていたり,通勤時間がかかり,労働時間を自分の思うように変えられないサラリーマン生活が主流の今日では,それも不可能となり,多様な保育サービスが社会的な制度として整備されなければ,核家族の共働き夫婦の生活は成り立たなくなっている. また,平均寿命が延びることに伴い,働く能力がなくなり,あったとしても働く機会がない高齢者も増えてきている.それら高齢者の生活保障の問題(年金制度など)や医療・介護問題(医療保険・介護保険制度)への対応も,子どもの数が減り,かつ子どもが近くに居住しているとは限らない状況の中では,子どもや親類だけでは対応できないほどに深刻化してきている. さらには,近代工業の発展に欠かせなかった石炭産業労働者にみられたように,工業化が進む中で労働災害に遭う機会が多くなり,結果としてそれに伴う障害者や死亡者の数も増えてきた(労働災害保険制度).また,病気をすることにより,働けなくなった人びとの医療や医療費の負担(医療保険制度),あるいは疾病に伴って,働けなくなった間の所得を保障していくことも,工業化が進展する中で大きな問題になってきた. このように,自然発生的に有していた家族や地域の素朴な助け合い活動だけでは対応しきれない課題が社会的に増大していく中で,所得保障としての社会保険制度や介護,養育等の対人援助としての福祉サービスの提供という社会福祉制度が歴史的に発展した.(2)社会のセーフティネットと社会福祉 第二に,社会福祉は私たちの生活を保障するという立場よりも,どちらかといえば社会を維持し発展させていくという立場から,社会のセーフティネット(p.23参照)の制度,あるいは労働力確保や社会統合の制度として発展してきた側面もある. いつの時代にあっても,働く能力もなく身寄りもない人,あるいは親が死んで保護してくれる人がいない子どもなど,「鰥かん寡か孤こ独どく」(61歳以上で妻のない者,50歳以上で夫のない者,16歳以下で父を亡くした者,老いて子のない者.対象となる年齢は時代によって異なっている)の人びとはいた.また,自然災害等で田畑を失い,生活が困窮に陥った人もいた.あるいは,生まれながらにして身体的,精神的に障害を有しており,働く能力をもてない人びともいた.このような生活困窮者が増大してくると,社会全体が不安定になることもあり,社会的に放置しておくこともできない.そこで,社会の安あん寧ねい秩序を保つ上からも,これらの課題への対応が求められてくる.それは,封建時代にあっては為政者の慈善として行われる場合もあるし,宗教家の活動として,講,結講:民間の金融組織または相互扶助組合.掛け金を出し合って,一定期日にくじ・入札により順次に金を融通する組合.頼母子(たのもし)講,無尽(むじん)講など.結:農作業などで,互いに労力を提供して助け合うこと.131現代社会と社会福祉・社会保障
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