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ことになる.そのためには,日常生活の場である地域での,近隣住民で支え合える「福祉コミュニティづくり」が重要であり,そのような社会福祉観と人間観を多くの住民が体得できるようにしていくことが必要となる. 地域自立生活支援には,行政が制度として提供する「制度的サービス」(フォーマルケア)だけでは十分でなく,どうしても近隣住民による見守り,声かけ,触れ合い,支え合いといったインフォーマルケアとしてのボランティア活動が欠かせない.このような地域づくりが今,地域での子どもの安全を守る上からも,一人暮らし高齢者の孤独死をなくす上からも,地域の防犯・防災の上からも求められている.(4)地球規模でのヒューマンセキュリティの構築 最後に,21世紀の世界においては,地球規模で物事を考えないと国民の生活の安定と社会保障,社会福祉の安定は保てないところにきている. 近代における社会福祉,社会保障制度の発展は,いわば「一国ソーシャルセキュリティ」(一国の国民のみを考えた社会保障制度)をどう構築するかということだった.しかしながら,経済が地球規模で行われ,日本の食料自給率が大幅に下がり,貿易によって日本の経済と生活が支えられている現状や,その経済を支えるための日本人の海外派遣や地球規模での人口移動,世界規模での金融活動,そして日本における在住外国人の増大等を考えると,鎖国でも考えない限り,一国ソーシャルセキュリティを維持していくことは困難である.しかも,たとえ一国ソーシャルセキュリティを守ろうとしても,国際的に地球規模で物事を考えなければならないところにきている現実がある. 一方,日本は憲法前文において,「全世界の国民が,ひとしく恐怖と欠乏から免れ,平和のうちに生存する権利を有することを確認し」とうたい,その達成のために努力することを世界に約束したが,この憲法の理念の達成が今こそ改めて想起される必要がある.それだけに,全世界の国民がどうしたら恐怖と欠乏から免れることが可能なのか,また豊かな生活がどうしたら保障されるのか,政府レベルでも,国民レベルでも真剣に考えなければならない時期にきている.自らの生活の安定を考えれば考えるほど,国際的に大きな課題になっている“鰥寡孤独”の問題にも目を向け,世界的規模でのヒューマンセキュリティ(人間安全保障)を構築していくことが求められている.事実,そうしなければ日本の一国ソーシャルセキュリティも維持できないほどに国際化が進んでいる.(1)救貧的社会福祉から個人の尊厳を旨とする社会福祉基礎構造改革 ところで,皆さんは,「社会福祉」と聞いて,どんなイメージを思い浮かべるだろうか.社会福祉は貧困者や障害者への援助なのだから自分とは関係ないと考えているだろうか.あるいは,明るいイメージをもっているのであろうか,それとも暗いイメージをもっているのであろうか.さらには,社会福祉を慈善と同じに考えているのか,それとも社会福祉は国や地方自治体が行政責任としてすべて行うというイメージなのか,あるいはこれからの社会福祉は行政により,法制度として行われるサービスと住 3社会福祉サービスの拡がり,地域自立生活支援と社会福祉基礎構造改革151現代社会と社会福祉・社会保障

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