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 「社会福祉」という言葉から何を思い浮かべるだろうか.経済的に困っている人や障がいをもった人を支える制度で,普段の自分の生活には関係ないものではないかとか,自分が高齢になって,介護を必要とする状態になったら身近に考えるかもしれない,という答えが多いのではないだろうか.しかし,自分では気づかなくとも,生きていく上で多くの社会福祉や社会保障の制度の支えを受けている.例えば,子どものころに通った保育所,祖母が受けている介護保険サービス,医療機関を受診するときなど,社会福祉・社会保障の制度は,現代においてはすべての人に身近な制度である. 今世紀は,少子高齢化が進展し,それぞれの課題の解決に向けて,介護保険制度に始まり,老人医療費や年金制度の改正,少子化対策,医療保険制度改正など,さまざまな取り組みが行われている. 本書は,社会福祉・社会保障が変革期にある今,そこに至る歴史を学び,現在何が行われ,今後どこを目指しているのか理解し,看護に役立てていただくことを目的としている.そこで,系統立てて学んでいただくために,大きく三つの部分から構成した.一つめは「総論」ともいえる,社会福祉・社会保障の目的や機能および歴史にふれる章である.二つめは「方法論」として,社会福祉の実践方法,社会資源の活用方法にふれる.三つめは「各論」として,子ども,障がい者,高齢者などライフサイクルに応じた諸制度について解説している章と,生活保護,地域福祉,社会保障制度についての章立てとなっている.そして,最後は特別編ともいえる「生活と福祉」である.ここでは障がいをもちながら地域で生活するとはどういうことなのかを,また,自分や家族に起こる身近なできごとが社会福祉や社会保障とどのようにつながっているのかを,豊富な事例を通し,場面を思い描きながら読み進めていただきたい. ともすると臨床現場では医療の提供に目が向いてしまいがちになり,病棟で出会った患者さんの家庭での暮らしを思い描きながら,日々のケアにあたるのは難しいかもしれない.しかし,患者さんからは医療ケアだけを求められているのではなく,臨床にあっても地域に生活している人としての視点をもつセンスは必要である.本書がその一助となれば幸いである.編者を代表して島田 美喜はじめに

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