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 「研究」を広辞苑で調べると,「よく調べ考えて真理をきわめること」1)と記載されています.さらに「真理」については,「㋐意味論的には,命題の表している事態がその通りに成立していること.例えば「雪が白い」という命題が真であるのは,事実雪が白いときである.㋑真理認識の方式にはおおよそ三つの立場がある.命題(認識する知性)と実在との合致によって真が成立すると考える対応説.当の命題が整合的な信念体系の内部で矛盾せず適合するときに真が成立すると考える整合説.命題や観念が実践的行為において有効・有益であるときに真が成立すると考えるプラグマティズム.ほかに,「Pは真である」は命題Pと同義であるとする真理の余剰説などがある.㋒倫理的・宗教的に正しい生き方を真理ということもある」2)と解説されています. この考え方に沿うと,よく調べるということは,観念と実在が合致しているか否かを調べる,その考えが観念体系の中に適合しているか否かを調べる,仮説が事実によって検証されるか否かを調べる,などということになります.調べる際には証明法が必要になります.また,実在や事実をどのように把握するかという客観性も重要です.㋒項は別として,広辞苑の解説は看護学の研究においても妥当性をもっているものです.しかし,看護学は観念の世界だけのものではありませんので,真理を追究するという考え方に実学としてのあり方も加えることができます.すなわち,混こん沌とんとした現実を分類整理して解決すべき問題を見つけたり,解決策について検討したり,解決策を開発するなどということも研究の範はん疇ちゅうに加えられます.(1)看護研究の必要性 看護,特に看護実践にとって,研究(看護研究)は看護の理論を生成するだけではない重要な意義があります. 実践(看護)を研究の対象として分析・検討し,客観視することによって,ある目標をもって特定の条件をもつ利用者にこの看護を行うと,どのような結果が得られるかを明確にできます.つまり,その看護に根拠を得ることができます.また,どの看護師であっても,その看護をきちんと行えば看護の質が保たれるという一般化ができ,マニュアル化することもできます.看護の初心者は,マニュアル(基本形)を使ってその看護を正しく用いれば,安全で効果的な看護ができ,その看護の基本形を学習して実践していく中で,次第に応用ができるようになっていきます.つまり,学習内容(教育内容)を豊かにします. 私たちは,自身の経験を重ねることによって,この看護はこのような結果を得られると知り,自分の実践に自信を得ていきます.しかし,この方法だけでは一人ひとりの看護師の経験が豊かになるまで待っていなければならず,積極的に看護師全体の力を上げていく方法とはいえません.看護研究によって根拠を得た看護を共有すれば,看護師の総合的な力をシステムとして向上させていくことができます.研究は実践の質の向上に大きく貢献しています. 1事例研究とは 1研究とは何か10

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