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それぞれの事例からデータを取り出す方法としては,質的な研究法や疫えき学がく的な研究法,繰り返しのデータ収集法などがあります.私は疫学を学び,その手法を用いることが多くなっています. 繰り返しの研究法の例として,在宅療養者の方の「痰の吸引回数に影響する要因を分析」するために,一人の方の9年間にわたる日々の観察記録(資料数は3,285日分)から,一日の吸引回数と,体調や吸引に関係すると仮定した項目を取り出してその関係性を分析・検討するという研究が挙げられます.この論文はある学生の修士論文ですが,日本呼吸管理学会誌に掲載されました4).複数の事例のデータを収集して分析・検討する際に,質的な研究法を用いるのか,統計学的な研究法や疫学的な研究法を用いるのかは,それぞれのデータの特徴や研究目的などに応じて適切な方法を選ぶ必要があります.質的研究も統計学的研究も疫学的研究も,それぞれ確立された方法がありますので,それをきちんと踏まえて行うことが重要です. これらの研究法の関係を図1-1に示します. 個別例の分析や検討は,まず対象を詳細に,正確に,客観的に観察することから始まります.私は,日々の実践はまさしくこれだと考えています.ポイントを押さえた詳細で正確,客観的なデータ収集と,問題を見つけて解決するための分析は,アセスメントそのものです.日々の看護と研究を関係付けずに考えていると全く別物に思えますが,関係付けて考えていると思考が両者を包含したものになってきます.実際には,①データ収集を詳細・正確・客観的に収集する態度が身に付いた,②研究的な考え方によって,サービス対象者の新しい問題を早く発見でき,他の方と同じに扱ってはいけない点や,解決策を考えなくてはならない共通した課題などをはっきりさせられたと思い返しています. 私の学部の学習過程では,教養課程では物理学や化学の実験を通して,専門課程で疫 学地域や集団内で,病気の流行など,疾患や健康に関する事象の発生の原因や変動のさまを研究し,明らかにする学問. 2研究法を学ぶ上での事例研究の意義言語のデータ質的データ質的研究量的研究質的分析(GT法,エスノグラフィー法,現象学など)測定値など連続数値のデータ量的データ(記述統計, 検定など)統計手法など数量化少数事例に対してこれらを行うのが「事例研究」図1-1●事例研究と質的研究および量的研究の関係図12
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