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151人々の生活と看護のかかわりなければ人体に危害を及ぼし,または危害を及ぼすおそれのある行為を医行為という.「診療の補助」行為は「医行為」の一部であり,判断と技術的な難易度が相対的に低い医行為を,医師あるいは歯科医師の指示のもとで行う.具体的にどのような行為が診療の補助に含まれるのかは,看護教育の高度化,医療機器・材料の改良,医療技術の進歩などによって変わってきた歴史がある.かつて静脈注射は診療の補助行為ではなく,医師が行うべきものとされていたが,2002(平成14)年からは診療の補助行為として位置付けられた(p.22参照).また2015(平成27)年には,褥瘡の壊死組織の除去や気管カニューレの交換など38行為が特定行為として診療の補助と位置付けられた(p.214参照).この変化は,病院と異なり看護師が単独で活動を行う在宅の場で,看護職が対象者の状態に応じて柔軟に対応して処置を行うことで,対象者にとってメリットがあり,医療が効率的・効果的に行えると認識されてきたことが大きく影響している. 看護職は,看護基礎教育においても資格取得後も,継続して医学的判断および技術に関連する内容を含んだ専門教育を受け,医学的能力を有している.医療が行われる場のみならず,生活の場でもその能力を発揮し,自律した専門職として活動することが期待されている.(1)国籍・文化背景の多様性 旅行や仕事を含めて日本に入国する外国人は年間約2,320万人で,日本を生活の場としている外国人の数は約240万人,それぞれ年々増加傾向にある2,3).また,2011年に医療滞在ビザが導入されたことから,今後,健康診断や治療を目的に来日する外国人の増加も見込まれている.来日する外国人,在留外国人の有する健康課題についても看護職は関心を向け,看護の対象としてとらえていく必要がある. 外国人のもつ健康課題は,まず健康情報や医療へのアクセスの難しさが挙げられる.健康情報の多くは日本語で発信され,外国語への対応がなされていないことが多い.また医療機関を受診しても,外国語での標識表示や医療通訳などの言語サービスが整備されていないことから,受診をためらったり,スムーズなコミュニケーションができず,適切な時期に適切な治療が行えないといった問題が起こっている.また,通訳を患者の家族や友人が担うことが多く,通訳が正確でないことや,予後不良など深刻な病状説明時の通訳者への心理的負担といった問題も指摘されている.宗教によっては,食事や衣服の制限があったり,国や地域によっては,排泄の様式や体の清潔の方法も異なっており,文化の多様性を踏まえた看護を行うことが求められている.(2)ジェンダー,セクシュアリティの多様性 対象の多様化では,ジェンダーとセクシュアリティにも着眼する必要があろう.性的マイノリティーといわれる人々の多くが,人間の性を「男性」と「女性」とに分けて成り立っている社会のしくみの中で不自由さを感じ,また偏見に苦しんでいる.看護活動の場での例を挙げると,病室・トイレ・更衣室・浴室など施設環境の問題,婦人科等への受診の問題,同性のパートナーに対する面会や説明と同意の問題などがある.守秘義務を守りつつ患者の権利を尊重する,きめ細やかな対応が必要になる.→plusα「行政命令による業務の変化の例」p.201も参照.5看護の対象の多様化と看護活動医療滞在ビザ日本で治療等を受けることを目的として訪日する外国人患者等および同伴者に対し発給される.治療行為だけでなく,人間ドックや健康診断なども対象となる.在留外国人出入国管理および難民認定法上の在留資格をもって日本に中長期間在留する外国人(中長期在留者),または特別永住者のこと.多様性に関わる課題同性のパートナーは,実質的には配偶者のような存在であっても,家族関係を法的に示すことが困難なため,入院の保証人になったり治療方針に関する説明の場に同席することができない,意思決定に関与することができないなどの問題が指摘されている.

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