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はじめに 日本は,これまでの病院での治療を中心とした医療から生活の場でのケアの時代に移行しています.世界は,平和で持続可能な社会を目指し動き始めました.看護職は医療とケアの専門職として,社会から活躍を期待されています. 看護管理は,看護の目的を効率的,効果的,そして創造的に果たすための機能です.看護職が,高齢化や重症化によるケアニーズの増大,生き残りをかけたヘルスケア組織の経営圧力の中で,人々の尊厳をまもりケア専門職としての責任を果たしていくためには,看護管理がこれまで以上に重要になります.看護職自身の自律を支え促進し,ケアの対象者,提供者双方の多様性を踏まえた協働のしくみをつくり,市民と共にケアを創造していく看護管理です. ナーシング・グラフィカ『看護管理』第4版は,これまでの看護管理学の体系を踏襲しつつ,新時代の「看護管理」の重要点として以下の四つを挙げ改訂しました.1.すべての看護職に看護管理能力が求められる 看護管理は,看護管理者だけのものではなく,看護学生を含めてすべての看護職が看護活動を効率的,効果的,創造的に行うために必要な能力です.このテキストでは,看護管理の初学者が,看護管理とはどういうことか,その本質を理解し,日々の学習活動の中で活用していけるよう工夫しています.可能な限り看護職の視点に立って説明し,平易な表現とし,専門用語には解説を,そして事象と結び付けて理解できるよう事例を随所に入れています.2.看護管理は,看護・ケアの価値を基盤とした管理である 看護管理では,企業における管理と同様に,経営学をはじめとした他分野の理論を活用します.しかし看護管理の大きな特徴は,管理の目的が,看護活動によって人々の健康と幸福に貢献するということにあります.そのためには,療養者と職員の人間性を尊重し,公共性に立脚して,組織経営における効率性・競争性との折り合いをつける管理が求められます.このテキストには,倫理性やダイバーシティー(療養者や職員の多様性)の視点が加えられ,全体に人間尊重,市民中心の看護・ケアの価値を基盤に解説しています.3.看護管理には,組織への視点とともに,組織を取り巻く社会への視点が必要である より良い看護を行うには,他者と共に活動すること,つまり協働が不可欠です.看護組織メンバーとしての効果的な活動,またケアや活動の中で感じた問題の改

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