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 一般的に病院に入院している人に対しては,入院患者,外来通院している人に対しては,外来患者と呼ぶ.患者とは,病気に罹患していたり,けがをしたりして医師の治療を受ける人を指す言葉である.次にクライアントという言葉がある.クライアントは来談者を意味し,専門的な援助を求めてくる人を指す.対象者の自立性が高まっていることを示すことが多く,カウンセリングを受けに来る人などに関して使用することが多い.福祉領域では,利用者(ユーザー)という表現を使うことが多い.米国では,コンシューマー(消費者)という表現をすることもあるが,日本語としてはなじみにくい感が否めない.しかし,従来,患者といわれている人たちのなかに「消費者意識」が台頭してきており,インフォームドコンセント(十分な説明を受けた上での同意)やインフォームドチョイス(十分な説明を受けた上での自己選択・自己決定)の重要性の認識とともに,医療者が看護の対象者を消費者としてとらえるという認識は,今後ますます必要になってくると考える. 本書では,慢性病に罹患している人が依存的な存在ではなく,自立した存在としてセルフマネジメントができるようになることを目指している.また,慢性病に罹患している人が必ずしも病院に来ているとは限らず,予防的な関わりも重要であることから,慢性病に罹患している人一般を指す場合には,慢性病患者とか慢性疾患患者とは表現せず,慢性病者と表現する.また,慢性病に罹患している特定の人を指す場合には,「クライアント」と表現する. 慢性病の場合,病気そのものが完治するという状態は,ほとんどの場合,望めない.そのため,いかに病気とうまく付き合っていく能力を獲得するかが,クライアントにとっての目標になる. 急性病の場合には,医療者側の疾患管理能力が重要であるが,慢性病の場合には,生活の主体者であるクライアント自身の管理能力がより求められる.医療者側はアドバイスはできても,実行するかしないかは,日常生活のなかで,クライアントがその時々に行う判断にゆだねられている.ゆえに慢性病をもつクライアントの看護の目標は,まずはクライアントに,自分の中にある力を信じて希望をもってもらうことであり,第二に,クライアントと話し合いながら,クライアントのQOLと慢性病の療養法の折り合いのつけ方を見つけていくことではないかと考えている. こうした目標を達成するためには,セルフマネジメントモデルでのアプローチが適している.セルフマネジメントとは,クライアントが自分の病気の療養に関するテーラーメイドの(その人用にあつらえた)知識・技術をもち,生活と折り合いをつけながら,固有の症状や徴候に自分自身でなんとかうまく対処していくことをいう. 1なぜセルフマネジメントなのか 1慢性病をもつ人を表す言葉 2慢性病をもつクライアントの看護の目標14

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