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 エネルギーの必要量については個人の差が大きいため,性別・年齢・身体活動レベルだけでは示すことが難しい.そのため,食事摂取状況やBMI,体重の変化などからエネルギー摂取の過不足の評価をすることが必要である.日本人の食事摂取基準では,高齢者はフレイルの予防および生活習慣病の発症予防の両者に配慮する必要があることも踏まえ,当面目標とするBMIの範囲を21.5〜24.9kg/m2としている(表1.1-3)2).●栄養素とバランス●(表1.1-4,表1.1-5) 血清アルブミン値が高いほど,元気で長生きするとされる.タンパク質の摂取不足は,病気に対する抵抗力を低下させる.また,タンパク質はフレイルやサルコペニアとの関連が強く,予防としても十分なタンパク質を摂取することが大切である.高齢者のタンパク質の摂取基準は男性で60g/日,女性で50g/日が推奨量である.魚・卵・牛乳・大豆製品などの材料を,量や調理法を工夫してとるようにする.総脂質は摂取エネルギー全体の20%以上25%未満(30歳以上)を摂取するとよい.血清コレステロール値が高いと動脈硬化が進行し,心臓病を誘発し心筋梗塞や狭心症などを引き起こしやすくなる. 高齢者の栄養素の中で不足しがちなのはタンパク質やカルシウム,ビタミンなどである.特にカルシウムは,骨粗鬆症の予防のため650〜750mg/日(推奨量)とされ,ビタミンやミネラル類は,それぞれバランスのとれた摂取が必要となる. また,エネルギー供給源としての三大栄養素である,炭水化物(糖質)・タンパク質・脂質はバランスよく摂取できるようにすることが大切である.それには副食を十分にとる献立の工夫や栄養指導が必要となる.長年の食生活は急には変えられないものなので,可能な限り徐々に積み重ねながら改良していくような指導が大切である.●水 分● 加齢に伴い体内の水分量は減少する.また,腎機能の低下により尿濃縮力も低下し,腎での水分吸収が減少して水分排泄量が増加する.口渇の中枢機能も弱まり,のどの渇きの感覚が低下する.食べ物には水分が多く含まれているが,食欲が低下するので,水分摂取量も減少する.このような理由から脱水を起こしやすくなるため,1日に水分1,500〜2,000mL程度(食事時の水分を含む)の摂取が必要となる.食事をすることができれば,食事で1,000mL程度を摂取できるが,発汗が多かったり,食欲が低下したりするときは水分を補給する必要がある.●塩 分● 高齢者は,揚げ物や肉料理よりも比較的あっさりした和食を好み,長年の食習慣で味噌汁や漬け物がないと物足りなく感じるという人も多い.しかし,加齢により味覚の低下が生じることから,自覚のないまま次第に味付けが濃くなり,塩分過剰となることも多い.過剰な塩分の摂取は,高血圧や腎疾患を引き起こしやすいので,1日の摂取量が7.5g(女性は6.5g)未満になるようにする.食欲を低下させないように塩分血清アルブミン値血清アルブミンとは,血清タンパクの55~60%を占めるタンパク質のこと.組織と血液間の水,栄養素,代謝産物の移動に重要な役割を果たす.血清アルブミン値は,タンパク栄養状態の指標となる.骨粗鬆症骨にはタンパク質やリンなどとともにたくさんのカルシウムが含まれており,骨重量の約50%を占めている.しかし骨のカルシウム量(骨量)は若年期のピークを過ぎると年齢とともに減少する.骨量が減少すると骨の中の構造が壊れ非常にもろくなり折れやすくなる(脆弱性亢進).骨が軽石のようになるこの状態が骨粗鬆症で,圧倒的に女性に多い.閉経期の40~50代から急激に骨量が減少し,70歳以上になると10人のうち7人が骨粗鬆症を生じているという報告もある.男性では60歳過ぎから徐々に増える.寝たきりの原因が,骨粗鬆症による骨折であることも多い.年齢(歳)目標とするBMI(kg/m2)18〜4918.5〜24.950〜6420.0〜24.965〜74*321.5〜24.975以上*321.5〜24.9*1 男女共通.あくまでも参考として使用すべきである.*2 観察疫学研究において報告された総死亡率が最も低かったBMIを基に,疾患別の発症率とBMIの関連,死因とBMIとの関連,喫煙や疾患の合併によるBMIや死亡リスクへの影響,日本人のBMIの実態に配慮し,総合的に判断し目標とする範囲を設定.*3 高齢者では,フレイルの予防および生活習慣病の発症予防の両者に配慮する必要があることも踏まえ,当面目標とするBMIの範囲を21.5〜24.9kg/m2とした.厚生労働省.日本人の食事摂取基準(2020年版).表1.1-3●目標とするBMIの範囲(18歳以上)*1,214

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