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 老年看護学は今やすべての看護領域で必要とされている学問といえるでしょう.いかに生きて老いを迎え,よりよい人生を閉じるのかということは,あらゆる年齢の人にとって共通の課題だからです.これは,自分の生活のありさまを意識し,患者あるいは個人として生きていくために,必要な課題でもありましょう. 人々のこれまでの願いは,「長寿」でした.それを実現できたいま,人々は生活のすべてに「加齢」という課題を突きつけられ,自分の老後を意識して「老いていくとは何か」を考えさせられています.このことは,医療の場においてはもちろんのこと,地域の生活でいかに高齢者の生きがいを考えるべきかといった課題とともに,高齢者の力を地域活動に活用するといったさまざまな期待もされています.超高齢社会をマイナスイメージでとらえるのではなく,たまたま高齢者が人口の多くを占める社会を,どう生かして活気あるものにしていくかという考え方になってきているように思われます. 医療機関では,入院患者のほとんどが65歳以上になっています.これは病院で看護を考えるときに,あらゆる領域で「老化」の知識なしに看護を実践できないということでもあります.成人領域や精神領域,在宅領域ではもとより,母性・小児領域においてさえも,家族関係をみる際には,高齢者の課題は避けられなくなっています.医療体制が病院から地域へシフトしてきていることを考えると,地域全体で高齢者ケアを考え,生活機能の視点をもった看護を実践していくことが必要だといえましょう. この視点を基盤にしながら,老年看護学②『高齢者看護の実践』では,「高齢者の生活を支える看護」「認知症・うつ病・せん妄の看護」「治療を受ける高齢者の看護」「終末期の看護」「高齢者看護の実習」と章立てをしました. 高齢者の生活では,加齢変化と,さまざまな疾患や薬剤による影響,環境から起こる変化が連続して,あるいは加齢変化に重なって起こってきます.それゆえ,これらの関連を“つないで”理解できる構成にするとともに,それぞれの原因についても,しっかり学べるようにしました.これまで援助論に焦点を当てていた「食事」「排泄」「清潔・衣生活」「活動と休息」「歩行・移動」といった内容についても,前述したような関連を意識して学べるように,生活場面の構成をブラッシュアップし,より実習や臨床現場に即した構成としました. 高齢者に多くみられる疾患については,高齢者特有の疾患・症状,看護について解説しました.これまでの疾患や症状に加えて,年々患者数が増えている慢性はじめに

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