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 援助関係とは,健康に関わるニーズを有する子ども,およびその家族に対して,看護者が専門性を発揮し責務を果たしていくために結ぶ対人関係であり,一般的な人間関係とは異なる.援助関係を形成する上で,パートナーシップを確立することが重要である.パートナーシップとは,異なる立場の者(子ども・家族,看護者・医師など)が,お互いを尊重し,目標を共有化し,具体的な課題を協働して解決していくことである.小児看護に携わる看護者は,援助関係を形成する技術を活用して,子どもと援助関係を形成するとともに,家族とも援助関係を形成し,維持・深化させていく.(1)目 的●全体性をもつ一人の人として子どもをとらえる.●子ども-看護者との心理的距離を縮め,子どもの理解を深める.●子どもに安心感をもたらす.●子どもが力を発揮できるように支援する.●子どもの抱えている健康問題を明確にし,解決に向けて子どもとともに取り組む.(2)実施方法 はじめに 1子どもとの援助関係を形成する技術援助関係の形成 1, 2)ロジャーズは,援助関係とは一方の人が他方の人に対して少なくとも成長させ,発達させ,機能の働きをよくさせること,よりよく人生に対処していくことを促進させようという意図のある関係であると述べている.看護者は,保健師助産師看護師法などの法律や社会規範,病院等の規則などを基盤に,患者や家族と必要な人間関係(対人的相互関係)を発展させ,専門的な援助を提供する援助関係を形成する.基本的姿勢と援助関係を形成する技術3‒8)アドバイスA.基本的姿勢①子どもを一人の人として尊重し,子どもの権利を擁護する姿勢で関わる.②子どもに必要なケアや処置を行う中で,子どもの心を支え,子どもとの関係性を形成していくという姿勢で関わる.③子どもの病状や発達的特徴を考慮し,子どもの体験を理解しようとする受容的・共感的態度で関わる.●援助関係は必ずしも時間を費やさなければ形成できないものではない.短期入院の子どもが増加する中で,“入院時オリエンテーションをしながら”“ケアをしながら”“処置をしながら”子どもとの関係性を築いていく.B.子どもと援助関係を形成する技術1.子どもと援助関係を結んでいく技術①コミュニケーション技術を用いて相互理解を深める.●タイミングを計りながら子どもに近づき,コミュニケーションをとる.●乳児や年少児の場合,家族(親)と会話をする中で,子どもにも少しずつ働きかけていく.●子どもが,自分の考えや思いを話せるように,子どもと目を合わせ,子どものペースに合わせてうなずく.●子どもが緊張している場合,看護者が積極的に近づき身体に触れると,子どもを怖がらせてしまうので,少しずつ近づく.●子どもに開かれた質問を行い,子どもの考えや思いを引き出す.●子どもが自分の考えを整理できるように,子どもが話した言葉を用いて,子どもが話した内容を繰り返す.●開かれた質問とは,「はい」「いいえ」で答えられる質問ではない.「どう思ったの?」「どんなことがしたいの?」など,相手が自由に自分の考えを語ることができるような質問をいう.●子どもに合ったコミュニケーションの取り方を工夫する.●非言語的コミュニケーション(子どもの表情・話し方・声の調子・しぐさなど)に注目し,子どもの気持ちを読み取る.●病気や治療に伴うストレスにより,子どもは獲得していた言語的コミュニケーション能力を十分発揮できない場合がある.子どものストレスを軽減するケアを提供するとともに,子どもが12

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