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基本的姿勢と援助関係を形成する技術3‒8)アドバイスA.基本的姿勢①子どもを一人の人として尊重し,子どもの権利を擁護する姿勢で関わる.②子どもに必要なケアや処置を行う中で,子どもの心を支え,子どもとの関係性を形成していくという姿勢で関わる.③子どもの病状や発達的特徴を考慮し,子どもの体験を理解しようとする受容的・共感的態度で関わる.●援助関係は必ずしも時間を費やさなければ形成できないものではない.短期入院の子どもが増加する中で,“入院時オリエンテーションをしながら”“ケアをしながら”“処置をしながら”子どもとの関係性を築いていく.B.子どもと援助関係を形成する技術1.子どもと援助関係を結んでいく技術①コミュニケーション技術を用いて相互理解を深める.●タイミングを計りながら子どもに近づき,コミュニケーションをとる.●乳児や年少児の場合,家族(親)と会話をする中で,子どもにも少しずつ働きかけていく.●子どもが,自分の考えや思いを話せるように,子どもと目を合わせ,子どものペースに合わせてうなずく.●子どもが緊張している場合,看護者が積極的に近づき身体に触れると,子どもを怖がらせてしまうので,少しずつ近づく.●子どもに開かれた質問を行い,子どもの考えや思いを引き出す.●子どもが自分の考えを整理できるように,子どもが話した言葉を用いて,子どもが話した内容を繰り返す.●開かれた質問とは,「はい」「いいえ」で答えられる質問ではない.「どう思ったの?」「どんなことがしたいの?」など,相手が自由に自分の考えを語ることができるような質問をいう.●子どもに合ったコミュニケーションの取り方を工夫する.●非言語的コミュニケーション(子どもの表情・話し方・声の調子・しぐさなど)に注目し,子どもの気持ちを読み取る.●看護者の判断や,看護者が提供できるケア,これから行おうとしているケアについて,認知能力やコミュニケーション能力に応じた方法で,子どもが理解できるように説明する.●看護者の気持ちを子どもに伝える.②コミュニケーションを積み重ねていく.●さまざまな場面で子どもとコミュニケーションを重ね,子どもの理解を深める.●遊びを活用しながら,子どもが自分の思いを表出できるように働きかける.●子どもの側にいることにより,看護者の存在をアピールする.●子どもの気持ちがわかっていることを伝える.●子どもの思いを代弁する.●病気や治療に伴うストレスにより,子どもは獲得していた言語的コミュニケーション能力を十分発揮できない場合がある.子どものストレスを軽減するケアを提供するとともに,子どもが示している非言語的なサインを見逃さないようにする.●子どもと目を合わせ,子どものペースでコミュニケーションを図る.●ケアを通してコミュニケーションを図る(入浴場面での遊びを活用したコミュニケーション).●ケアを通してコミュニケーションを図る(おむつ交換時のスキンシップによるコミュニケーション).③子どもの心の安定を図る.●子どもの名前を呼んだり,挨拶をすることにより,看護者が見守っていることを子どもに伝える.●笑顔で話しかけ,明るく親しみやすい雰囲気を作る.●子どもに継続して関心を払い,いつでも対応できることを示す.●日常的なケアを通して子どもに安心感を与える.●子どもにとって安心できる病院環境に整える(飾り付けの工夫や絵本,おもちゃなど).●子どもは,病気に伴う苦痛,病院環境,医療者との出会いなどにより,不安や恐怖を体験している.できるだけ早く「子どもの心の安定を図る」技術を用いる必要がある.●子どもが家族とのつながりを確認できるもの(写真・家でいつも使用していたおもちゃ・子どもの持ち物など)を子どもの側に置く.●家族の存在や家族からのサポートは,困難な状況に直面している子どもの支えとなる.●可能な限り,子どもが家族とともに過ごし,家族とのつながりを実感できるように援助する.●看護者が自分自身をコントロールする(例えば,どんなときも親しみのある態度で子どもに関わる,看護者が自分自身の不安を表出しないなど)ことにより,子どもに安心感をもたらす.④子どもの意思を尊重する.●子どもが自分の意思を明確にすることができるように,子どもの認知能力やコミュニケーション能力に応じた方法で,必要な情報や知識を提供する.●家族は仕事やきょうだいの世話などのため面会することが困難になる場合がある.子どもが家族との絆を実感できるようにアプローチすることが重要である.●子どもがどのようにしたいのか,どのような援助を求めているのか,考えを整理できるように,子どもの意見の表出を促したり,子どもの話を傾聴する.●子どもの気持ちを確かめる.●処置や検査を行うときは,例えば,何時からするのか,どちらの腕で行うかなど,可能な範囲で選択肢を提供し決定する権利を保障する.●子どもの意見と看護者の意見が異なる場合,子どもと話し合い,現実的な折り合いを見いだす.2.子どもとの関係を維持・強化していく技術①子どもの力を支える.●子どもと一緒に何かに取り組むことにより,相互の信頼を強める.●子どもがどの程度脅かされる体験をしているのかを把握する.●子どもの日常生活の場面で,一つひとつ子どもの意思を尊重する技術を用いることが重要である.●傾聴とは,受動的に相手の話を聴くのではない.相手が話していることの意味を理解しようと努めながら神経を集中させて聴くことである.相手が話しやすい状況をつくる,間を置く,話を促す,話を整理する,理解を確認する.●子どもに検査・処置・看護ケアを行う場合は,子どもが理解できるように,認知能力に応じた方法で,必要性や方法について情報を提供し,子どもの心理的準備性を高める(プレパレーション).●検査・処置を頑張って受ける子どもを励ましたり,感情の表出を促したり,褒める.●紙芝居や人形の活用など,子どもが具体的に理解できるよう工夫する(ナーシング・グラフィカ 小児看護学①『小児の発達と看護』3章5節5・6,3章6節3参照).●子どもが今まで困難な状況に遭遇したときにどのような方法で乗り越えてきたのかを把握し,子どもなりの方法で乗り越えていくことができるように関わる.●学童期以降の子どもの場合,友達とのつながりを維持し,帰属感をもつことができるように援助することにより,子どもの闘病意欲を支える.●困難な状況を乗り越えていくための方法を,子どもにわかるように具体的に教える.●病気体験を,自分の力を強めたり学ぶことのできる一つの体験として肯定的に意味づけることができるように,子どもが感じていることについて表出できるように促し,受け止める.●ナーシング・グラフィカ 小児看護学①『小児の発達と看護』3章1節1~4参照.②子どもとの関係性をモニタリングする.●子どもの表情や様子から,子どもが看護者といることで安心感を得ることができているかを確認する.●看護者に近づいてくる,相談する,質問をするなどの子どもの行動から,看護者が子どもの身近な存在となっているかをとらえる.●子どもが看護者と一体感をもつことができ,エネルギーを補強することができているかをとらえる.●子どもが看護者を,自分のニードに応えてくれる人として位置づけることができているかをとらえる.③子どもの理解に基づくケアを提供する.●今まで築いてきた子どもとの関係性を基にケアの幅を広げる.●子どもを理解した上で,より効果的なタイミングでケアを提供する.●専門的知識に基づいて,その子どもに合ったケアの方法を工夫する.●子どもと看護者がお互いを理解し,お互いの理解に基づく継続的なケア,一貫性のあるケアを提供する.●子どもとの心理的距離は,子どもが看護者に対してどのくらい心を開いているかにより判断することができる.3.子どもが問題を乗り越えていくことを支援する技術●子どもが抱えている問題について,一緒に考え取り組んでいくつもりであるということを子どもに伝える.●子どもが現状をとらえ,何が問題かを明確にすることができるように,子どもと話し合う.●子どもが問題を乗り越えていく中で体験する不安や,喜びを共有する.●子どもと看護者が共同して問題解決の目標を立てる.●子どもと看護者が話し合い,問題解決の目標に向かってどのように取り組むか,具体的に計画を立てる.●子どもが看護者と一体感を体験することにより,子どもが自分の力を発揮し,苦しい状況を乗り越えることが可能になる.●問題解決に向けて取り組んだ結果,どうであったかを子どもと一緒に評価し,必要に応じて目標の修正,計画の修正を行う.●子どもと看護者の関係の終結に向けて,子どもが徐々に看護者との同一化の段階から抜け出し,自立していくことができ●子どもは,問題が徐々に解決するに従い,看護者から見捨てられるのではないかという不安をもつ場合がある.子どもの依存のニードを認識しながら,徐々に子どもとの距離をもつように関わる.子どもが自信を取り戻して新たな生活に踏み出せるよ14

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