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看護者は,専門職として子どもの権利を擁護するとともに,家族(親)が子どもの養育責任を果たすことができるように支援していく責務を担っている.家族と援助関係を形成する技術は,子どもを育てながら苦悩している家族をケアし,子どもにとっての最善とは何かを家族と話し合い,子どもの権利を擁護する看護を実践する上で重要である(ナーシング・グラフィカ小児看護学①『小児の発達と看護』1章1節3参照)8).(1)目 的●家族を集団としてとらえ,家族を理解する.●家族-看護者との心理的距離を縮め,家族を支える.●家族に安心感をもたらす.●家族とともに問題解決に向けて取り組む.●子どものことをよく知っている家族と,専門職である看護者が,互いの専門性を認め合い,子どもにとっての最善とは何かを考え,最善のケアを提供する.●家族の力が発揮できるように支援し,家族のエネルギーを強める.(2)実施方法 2家族との援助関係を形成する技術基本的姿勢と援助関係を形成する技術4, 9, 10, 11, 12)アドバイスA.基本的姿勢①家族の意思を尊重する.②家族の言動にはそうせざるを得ない理由がある.家族を理解しようという共感的態度で関わる.③家族メンバーはさまざまな考えをもっている.看護者は中立であるよう,自分自身をコントロールする.④家族を“看護の対象”として位置づける.⑤子どもの身の回りの世話や症状の緩和,子どもの健康回復に向けて家族とともに取り組んでいく姿勢を示す.●自分自身の価値観や理想を家族に押しつけないように注意する.家族が感情や考えを話しやすいように関わり,家族を理解しようとすることが重要である.●「家族は子どものために~すべきである」というように,家族を子どもの資源として位置づけないように注意する.B.家族と援助関係を形成する技術①家族と向き合う覚悟をして,最大限専門性を発揮する.●看護者としての責任を果たし続けるということを決心し実行する.●家族を受け止め,家族とともに現実に立ち向かう決心をする. ●看護者としての責任:家族を看護の対象として位置づけ,家族が自らの力を発揮し健康問題に取り組むことができるように支援する.②コミュニケーション技術を用いて相互理解を深める.●家族が困難だと思っていることは何か,家族はどうしたいと考えているのかを理解する.●家族がどのような援助を希望しているかを理解する.●家族に,看護者としての判断や提供できるサービスを説明する.●家族と看護者が協働していく上で,率直で開かれたコミュニケーションをもつことは重要である.③情緒的に支援する.●親身になって家族の話を傾聴する.●家族の気持ちを吐露させる.●家族の迷いに添う.●ありのままの家族を受け入れ,その思いを大切にする,間をおくつもりであるということを子どもに伝える.●子どもが現状をとらえ,何が問題かを明確にすることができるように,子どもと話し合う.●子どもが問題を乗り越えていく中で体験する不安や,喜びを共有する.●子どもと看護者が共同して問題解決の目標を立てる.●子どもと看護者が話し合い,問題解決の目標に向かってどのように取り組むか,具体的に計画を立てる.の力を発揮し,苦しい状況を乗り越えることが可能になる.●問題解決に向けて取り組んだ結果,どうであったかを子どもと一緒に評価し,必要に応じて目標の修正,計画の修正を行う.●子どもと看護者の関係の終結に向けて,子どもが徐々に看護者との同一化の段階から抜け出し,自立していくことができるように関わる.●子どもは,問題が徐々に解決するに従い,看護者から見捨てられるのではないかという不安をもつ場合がある.子どもの依存のニードを認識しながら,徐々に子どもとの距離をもつように関わる.子どもが自信を取り戻して新たな生活に踏み出せるように支援することが重要である.151援助関係を形成する技術
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