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乳児期の子ども① 乳児から送られてきた表情・動作・発声などの非言語的コミュニケーションによる[メッセージ]を看護者がキャッチし,[メッセージ]に込められた意味や意図を解釈し,応答する. 【例】乳児が笑顔で手足をバタバタ動かしている →「抱っこして,お散歩に行きたいのね」と乳児からのメッセージの意味を解釈し抱き上げる.② 病気や入院による環境の変化により,子どもから送られてくる[メッセージ]が乏しくなる場合がある.子どもから送られてくるわずかな[メッセージ]を見逃さないように観察する必要がある.③ 乳児を抱く,あやすなどのタッチングや,笑顔など非言語的なコミュニケーションによる[メッセージ]を子どもに[フィードバック]することにより,子どもに安心感をもたらす.④ コミュニケーション能力の発達 ■生後1~2カ月ごろ:生理的要求・情緒的要求の表現として,泣き声に音の高さやリズムが出てくる. ■ 生後3~4カ月ごろ:「アーウー」など,喃なん語ごを発声するようになる.大人の働きかけを注視し,微笑したり,発声を伴って手・足をバタバタさせる. ■生後5~6カ月ごろ:喃語を話し言葉のように盛んに発するようになる.あやすと喃語で答える. ■生後6~7カ月ごろ:「ダメ」と言われるとそれまでの行動をやめるようになる. ■ 生後9~10カ月ごろ:興味のある物を指さしたり,手を伸ばして欲しい物をとってほしいという[メッセージ]を伝える.ちょうだい,バイバイなどの動作をすることにより,自分の[メッセージ]を伝える. ■生後10~11カ月ごろ:マンマ,ママ,パパ,ワンワンなど,片言を話すようになる.幼児期の子ども① 幼児期の子どもは,語ご彙い量が急速に増加する.言葉を遊びや生活の場面で実際に使うことにより,言語的コミュニケーションの仕方を学習する. ■1~1歳6カ月ごろ:単語一つで自分の要求を表現する一語文を話すようになる. ■1歳6カ月~2歳ごろ:言葉の数が急激に増える.名詞,動詞,形容詞を使う多語文を話すようになる. ■2~3歳ごろ:構文を理解し始める.言語的コミュニケーションにより,他者に[メッセージ]を伝える. ■ 3~4歳ごろ:過去・現在・未来などの動詞の区別ができるようになる.日常的なコミュニケーションには困らないようになる.② 病気や入院に伴うストレスにより,今まで獲得していたコミュニケーション能力を発揮することが困難になる子どももいる.看護者は,幼児期の子どもにとって安心できる存在,自分のことをわかってくれる存在,自分を受け止めてくれる存在としてとらえてもらえるように関わる.③ 認知の発達段階は前操作位相段階であり,自己中心的思考という特徴がみられる.したがって,言葉を使用していたとしても,大人と同じ意味で使用しているとは限らない.看護者は,幼児期の子どもの認知発達の特徴を理解した上で,子どもがどのような意味で言葉を使用しているのか,子どもからのメッセージを解釈したり,子どもへのメッセージの送り方を工夫する必要がある.④ 処置やケアを行う際に,「イヤ」という言葉がよく聞かれる.「何をされるのだろう」という不安から「イヤ」と言っていたり,「今はしたくない」という意思表示で「イヤ」と言っていたり,「イヤ」の意味もさまざまである.看護者は,幼児期の子どもがどうして「イヤ」と言っているのか,子どもの置かれている状況や,認知の発達的特徴も考慮して理解する必要がある.⑤ 入院生活の中で,子どもが初めて経験する処置や検査については,子どもが理解できるように説明したり,子どもが体験したこととそれを表す言葉を結びつけて教える. 【例】採血・注射「チックン」/心音・呼吸音の聴取「モシモシ」/体温測定「ピッピッ」/    血圧測定「シュポシュポ」/吸入「モクモク」⑥ 幼児期の子どもの認知発達の特徴を考慮し,遊びやお気に入りのキャラクターを活用してコミュニケーションを図ることができる. 【例】「プーさんが,○○ちゃん,チックン頑張って偉いねーって言ってるよ」 「キティちゃんが,頑張れー,モクモク終わったら一緒に遊ぼうって」学童期の子ども① 学童期の子どもとコミュニケーションをとる場合には,看護者は年齢を考慮した言葉遣いをするように注意する.② 学童期の子どもは,幼児期の認知発達の特徴である自己中心的思考が減少し,具体的事柄であれば物事を論理的に考えることができるようになる.言語的コミュニケーションにより,自分の考えを表現し他者に伝えることができる.しかし,病気や入院に伴うストレスにより子どもが脅かされている状況では,幼児期の子どもにみられる自己中心的思考がみられる場合がある.③ 学童期の子どもは,勤勉性の獲得という発達課題に取り組んでいる.子どもとコミュニケーションをとる中で,子どもが頑張ったことやできたことについては褒め,評価をフィードバックする.④ 学童期の子どもは,病気や入院により仲間と同じように行動できない(例えば,運動ができない,遊べないなど),仲間と分離される場合,仲間の一員であるという帰属感をもつことが難しくなる.子どもは自尊感情が低下したり,自分に対する自信を失ったり,他者とのコミュニケーションをとることが困難になったりする場合がある.学童期の子どもが病気であっても,仲間の一員であるという帰属感をもち続けることができるように支援することが重要である.思春期の子① 思春期の子どもとコミュニケーションをとる場合,年齢を考慮した言葉遣いに注意を払う.② 思春期の子どもは,認知の発達が形式的操作位相に達し,抽象的に演えん繹えき的に思考するようになる.思春期の子どもが自分の置かれた状況を理解し,判断できるように必要な情報を提供し,話し合うことが大切である.③ 思春期の子どもは,アイデンティティを獲得するという発達課題に取り組んでいる.病気である思春期の子どもは,健康な友表1.1-2●子どもとのコミュニケーション-発達段階別留意点 4,5)171援助関係を形成する技術

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