本書,小児看護学②『小児看護技術』は,新しい時代に対応する看護基礎教育テキスト「ナーシング・グラフィカ」の小児看護学のテキストとして編集しました. 本書では,子どもを発達していく存在であり,年齢や健康レベルにかかわらず,権利を有し行使することができる主体であるととらえています.一人ひとりの子どもの権利を擁護し,子どもに安全で安楽なケアを提供していくには,科学的根拠に裏付けされた,看護実践能力を習得する必要があります.小児医療の高度化・多様化に伴い,小児医療の場では,広範囲に及ぶ専門的な看護技術を,子どもの発達段階に応じて,あるいは子どもや家族の置かれている状況に応じて駆使することができる看護実践能力が求められています. 一方,少子化が進み,小児病棟が閉鎖され,混合病棟が増加している中で,小児看護実習を通じて見学・実施できる小児看護技術には限界があります.また,侵襲的な技術については,看護師の資格を有していない学生は,倫理的に実施することはできません.このような現状の中で,小児医療の場で求められている看護実践能力との間には,大きなギャップが生じていると言っても過言ではありません.看護基礎教育において,小児看護技術をいかに教育していくか,さらに対象に応じて小児看護技術を創造していく看護実践能力をいかに教育していくかが課題となっています. 2018(平成30)年に日本看護系大学協議会から「看護学士課程教育におけるコアコンピテンシーと卒業時到達目標」の報告書が出されました.文部科学省からは,「看護学教育モデル・コア・カリキュラム〜学士課程においてコアとなる看護実践能力の修得を目指した学修目標〜」が提示されています.また,看護師国家試験出題基準(平成30年版)では,子どもの成長発達の特徴や生活に応じた,子どもと家族への支援,疾患に対する子どもの理解と説明やプレパレーション,診療・入院等が子どもと家族に与える影響,多様な状況にある子どもと家族への支援などに関する知識及び技術に関する項目が整理・追加されています. 本書は,これらに対応できる内容となっています.第1章では「援助関係」を形成する技術を取り上げています.第2章から第10章では,看護の基本技術として「安心・安全な環境を調整する技術」「食事の援助技術」「排泄の援助技術」「清潔・衣生活の援助技術」「呼吸・循環を整える技術」「与薬の技術」「救急救命の技術」「症状・生体機能の管理技術」「安全・安楽を確保する技術」を取り上げています.これらの看護の基本技術に必要な根拠となる事柄を,基礎知識の部分ではじめに
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