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はじめに 看護学は,高度な医療の一翼を担うとともに,対象となる人々の人生における生老病死といった重大な出来事に寄り添い,人々の健康で幸福な生活の実現に貢献することを目指す学問です.また,看護職として求められる資質と能力は,多様な人々の看護に必要な知識と倫理観を備えていること,対象となる個人・家族を理解し,アセスメント結果に基づく根拠あるケアを提供し,その実践内容を適切に評価することです. 特に,ケアとして提供される看護技術は,安全・正確・安楽でなければなりません.看護学実習に臨むにあたり,学生の皆様が自身の看護技術について心配に思うことは,この点が大きいのではないでしょうか.もちろん,最初から看護技術を適切に実施・提供できるとは限りません.だからこそ,学内で繰り返し行われる練習,イメージトレーニング,ロールプレイ演習がとても大切となります. 母性看護においては,妊婦,産婦,褥婦,新生児,家族がケアの対象者となりますが,それぞれの発達段階,健康課題,心理的状態,社会的活動,日常生活動作が異なります.したがって,各対象者に対して提供すべき看護技術の内容,注意・配慮する点,必要物品も大きく異なります.そこで,本書では,母性看護に必要な技術について,写真やイラストを通してより具体的に学習できるように工夫しました.各技術については,技術を実施する目的・準備・実施方法・実施後の評価のポイントを示しています.また,技術の根拠となるような知識,あるいは技術を使う上でのコツなどを「プラスα」や「留意点」として付記しました.あわせて,対象者にその技術がなぜ必要なのかについて,ナーシン・グラフィカ母性看護学②『母性看護の実践』を活用して,理解を確実なものにしていただきたいと思います. 本書で示している看護技術は,必ず記載どおりに実施しなければならないというものではありません.妊産褥婦,新生児,家族のニーズや状況に合わせて修正・工夫し,技術を使用することができます.この修正・工夫が,さらなる看護技術の発展に寄与するものと信じるところです. 本書を通して,学生の皆様の母性看護学の知識と技術の統合に役立てていただき,母性看護学実習への準備がよりスムーズとなり,さらには母性看護学により興味と関心をもっていただければ,編者として大きな喜びです.荒木奈緒

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