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[疫 学] 国立がん研究センターがん対策情報センターの地域がん登録全国推計によれば,2012(平成24)年の白血病の罹患数は,男性7,297人,女性4,912人,人口10万人当たりの罹患率は男性約11.8,女性が約7.5と推計されている.他の悪性腫瘍と異なり,小児における罹患率が高く,青年期を含むほぼすべての年齢階級で発症がみられるという特徴がある.40歳以上の年齢階級では男性の罹患率が女性の罹患率を上回り,男女とも年齢の増加とともに罹患率の上昇が認められる.年齢調整罹患率は1995(平成7)年から2002年にかけて,緩やかに減少傾向を示していたが,高齢化の進行に伴い,粗罹患率は2006年から増加傾向に転じている.(1)発症機序 白血病は造血器悪性腫瘍であり,骨髄や末梢血中における単クローン性の腫瘍性血球の無制限な増殖を特徴とする.特殊な病型として,皮膚や軟部組織,骨など造血組織以外の部位に発生する髄外白血病も知られている.白血病の発症には,さまざまな遺伝子異常が関与することが明らかにされており,それらが個々の白血病の臨床像や治療反応性を特徴付ける重要な因子となっている.また,すべての血球は骨髄に存在する造血幹細胞から産生されると考えられているが,白血病細胞の起源,すなわちそれぞれの白血病が,造血幹細胞から成熟した血球に至るまでのどの分化段階の細胞の腫瘍化によって発症するかについても,徐々に明らかになりつつある.最近では,白血病細胞の多くは,自己複製能と一定の分化能を有する病的な造血幹細胞(白血病幹細胞)に由来していると考えられるようになっている.(2)分 類 造血器腫瘍の最新のWHO分類(2016改訂版)では,白血病という病名の付く病型が40種類以上区別されている.以下では,それらの臨床的特徴の共通性から,急性骨髄性白血病(acutemyeloidleukemia:AML),急性リンパ性白血病(acutelymphoblasticleukemia:ALL),慢性骨髄性白血病(chronicmyelogenousleukemia:CML),慢性リンパ性白血病(chroniclymphocyticleukemia:CLL)およびそれらの類縁疾患に大別して解説する(図1.2-1).●急性白血病(AML,ALL)● 急性白血病は,骨髄における未熟な血球(芽球)の著しい増加とそれに伴う正常造血機能の抑制(貧血,血小板減少)を特徴とする疾患である.極めて多様な病型があり,その国際的な標準分類法としては,WHO分類以外にFrench-American-British(FAB)分類がよく知られている.FAB分類では,主に白血病細胞の形態学的特徴によりAMLをM0〜7の8病型,ALLをL1〜3の3病型に分類する.なお,急性リンパ性白血病については,FAB分類よりも免疫学的な表面形質に基づいた分類が治療方針の立案に有用であり,前駆B細胞性,成熟B細胞性,T細胞性に大別して取り扱リンク  造血機能障害/免疫機能障害 2白血病(leukemia)小児・高齢者の白血病小児:主に急性リンパ性白血病.高齢者:主に急性骨髄性白血病.年齢調整罹患率年齢構成が異なる集団の間での比較や,同じ集団で年次推移をみるときに,それぞれの年齢階級に重みをつけることにより,人口分布をそろえて計算した罹患率のこと. 1疾病の概念→造血幹細胞については,ナーシング・グラフィカ『解剖生理学』4章参照.151血液・造血器疾患

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