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POS(問題志向型システム)では,患者の抱える問題を①身体,②心理(精神),③社会の3分野に分けて考えます.看護師も医師も,共にこの3分野を念頭に置いて日常の業務を行います.身体的問題に重点を置きすぎると,“疾患だけを見て,患者を看(診)ない”と批判される点でも,両者は似た立場にあります. どちらかと言えば,看護師は医師よりも心理や社会に関する問題に敏感なようですが,それはさておき,両者が医療の専門職といわれる根拠はどこにあるのでしょうか. 最初に,疾患に関する専門的知識を持ち,治療に関連した技能を有する点が挙げられるはずです. 看護学生は疾患を学ぶため,専門基礎といわれる解剖生理学,生化学,病態生理学,微生物学,臨床薬理学などを最初に履修します.それらを基に学ぶ「疾患に関する知識」は臨床の現場で必ず役立つものでなければなりません. しかし,疾患の数は膨大です.限られた時間内にすべてを学ぶのは,とうてい無理な話です.ではどうすればよいのでしょうか.私たちは,本書作成に当たり以下のように考えました.1)疾患の数を精選する看護学生として知っておくべき疾患を精選すべきと考えました.卒業の時点でこの程度は知った上で,臨床に足を踏み入れてほしい.そういう疾患を,14の分野で合わせて100ほど取り上げました.2)疾患の病態生理が理解できる医学生では必須の顕微鏡を用いた病理解剖学的知識よりも,患者の自覚症状や身体所見と関連した病態生理学的知識に重点を置きました.看護師の臨床に活かせるからです.3)平易な記述を心掛ける看護学生用として書かれた疾患に関する教科書は,たくさんあります.私が日常接している看護学生は,その難解な記述に疲れ果てているのが現状です.初心者にとって分かりやすくするために,記述を簡略にする努力を払いました.実習で接する患者さんの病態生理を厳密に反映するとは限らないが,こう説明すれば看護学生が疾患を理解してくれるのではと考えながら記述を考えました.はじめに
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