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 障害発生が交通事故や転落のように突発的に起きたか,疾病によって徐々に進行してきたかによっても区別される.疾病による場合には,脳卒中などのように突発的に起こるものと,腎不全や肺気腫のように徐々に機能が障害される場合とがある.がんや骨肉腫などの場合,生命維持のための手術などの治療によって人為的に障害を負わなければならないこともある. 身体障害以外にも,思考がまとまらなかったり他者との関係がうまく取れない精神障害や自閉症,学習機能が遅れている発達障害,学習障害(Learning Disability:LD),注意欠陥・多動性障害(Attention-deficit/Hyperactivity Disorder:AD/HD)などもリハビリテーションの対象となる.さらに,リハビリテーションは生きていくのにさまざまな困難のある障害をもった人が主な対象であることはいうまでもないが,その人と生活を共にしたり関わりが深い家族や周囲の人,地域社会全体なども対象に含まれる.(2)障害による影響 生活の基盤となる感覚や身体機能,言語や排泄などの機能障害は,日常生活や社会生活,他者とのコミュニケーションをはじめとした生活に大きな影響を及ぼす.さらに,生活面における不自由さだけでなく心理面にも及び,最悪の場合には生命の危機的状況に追い込んでしまうこともある.図1.1-1に主として生涯の途中で何らかの機能を失ったり低下したことによる障害の影響を示す. リハビリテーションの目的は,なんらかの障害によって自分らしく生きることが困難になった人が自分らしく生きる権利を回復することであり,その最終目標は,一貫してより高いQOL(quality of life)の確立にある.また,社会全体がリハビリテーションの過程に関わっていることが重要なポイントとなる. 3リハビリテーションの目的→QOLについては2章5節参照.生命の危機機能障害生活を営む能力の障害社会的参加・役割の変更・喪失家族の負担・経済的負荷体力の低下生活意欲の低下自己像の変化否定的自己概念の形成社会生活の縮小生活範囲の狭小化行動力の低下身体像の変化〈生活面への影響〉〈心理面への影響〉 変化背景因子結果図1.1-1●障害の影響とその広がり131リハビリテーションとは

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