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 1995(平成7)年1月に発生した阪神・淡路大震災を機に,1998(平成10)年,日本災害看護学会が発足し,さらに2009(平成21)年度のカリキュラム改正で災害看護教育の普及が進み,災害看護は広く浸透していった.その後,2011(平成23)年の東日本大震災や平成28年熊本地震では,災害発生直後から中長期にかけて,避難所や福祉避難所,病院,応急仮設住宅,在宅など広い範囲で多くの看護職者による支援活動が行われた.今後も,集中豪雨や火山噴火などによる局地的な災害の頻発や,首都直下地震,東海・東南海地震など,大規模な地震の発生が予想されている.災害による被害が頻発し,避難生活が多様化,長期化している事実を受け止め,さらなる災害対策の充実を図らねばならない.しかし,災害に対する危機感,防災・減災への認識は決して高いとは言えず,災害看護が果たすべき課題は多い. 災害は人々のいのちと生活を脅かし,生活基盤を破壊し,コミュニティーを機能不全に陥らせる.人々は身体的,精神的,社会的にも危機的状況に陥り,長期的な健康障害を引き起こす.災害看護は,災害が及ぼした生命や生活への被害を極力少なくし,自立し生活する力を支える活動とならなければならない.災害看護の対象は人々であり,そのコミュニティー,そして社会である.つまり,災害で被った健康リスクを環境や生活面から予測し,他職種と連携しながら計画的に対応策を検討し,コミュニティーで暮らす人々の健康や生活がよりよい状態になるようケアすることが災害看護の役割であり,そのための教育が重要である. 本書は,2004(平成16)年に黒田裕子先生と「看護職者に役立つ災害看護の本を執筆しよう」と話し合い,主に看護職者向けに出版した『災害看護』という書籍が原点となっている.その原稿を執筆していた年に福井豪雨が発生し,改訂版である『新版 災害看護』刊行の前年には,新潟県中越沖地震が発生した.その後も毎年のように各地で深刻な災害が発生し,災害看護,そして災害看護教育の重要性が認識されてきた.そうした時代のニーズに即応して,看護基礎教育のテキストとして本書が誕生した. 本書の生みの親の一人である黒田先生は,執筆の傍ら自ら被災地に入り,常に被災者に寄り添い,精力的に活動されていた.「最後の一人までも見捨てない.人間だから」と,中長期支援の重要性,要配慮者や福祉避難所の充実を訴え続けてこられた.そんな黒田先生は2014年9月,病に倒れ帰らぬ人となった. 黒田先生の思いを受け継ぎ,長田恵子先生,三澤寿美先生とともに今回の改訂はじめに

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