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12 日本におけるがんによる死亡者数は,2015(平成27)年時点で,年間37万人を超えており,生涯で,男性の62%,女性の46%(それぞれほぼ2人に1人)が,がんに罹患し,また,男性の25%(4人に1人),女性の16%(6人に1人)が,がんで死亡すると推定されている1).今後,高齢化の進行により,さらにがん患者が増加することが見込まれている. 人はがんに罹患すると,図1-1のような臨床経過をたどる.通常は,痛みや何らかの症状により受診し,検査を受けてがんの診断に至る.がんと診断されたら手術や放射線療法,化学療法(抗がん薬など)などの治療を受ける.近年では,早期発見や治療法の進歩により,長期生存できるがん患者も増えてきた.しかし,がんは再発や転移を起こす可能性がある疾患であり,再発や転移の場合には一般的に完全な治癒は難しいことが多く,再発に対する治療や症状を和らげる治療が行われ,最終的には終末期を経て死に至ることになる. これまで緩和ケアは,終末期のケアと思われてきた.しかし,図1-1に示すように,がん患者は診断時から,痛みなどの身体的苦痛を抱えていることが多い.また,治療や病気の進行により倦怠感(だるさ),食欲不振,呼吸困難,嘔気(悪心)などさまざまな症状が発現する.がんと診断されたときの衝撃から,病気の進行や再発・転移に対する不安,抑うつなどの心理的な苦痛を抱えることも多い . 1がん患者が抱える苦痛とQOL 1がん患者が抱える苦痛と緩和ケア苦 痛英語ではpain, distress, sueringなどの語で表現される.緩和ケアは従来,終末期ケアととらえられていたが,現在では患者・家族のあらゆる苦痛を緩和するケアととらえるようになった.患者の状況診断期痛みや身体的・精神的苦痛仕事の問題,家庭・家族の問題,経済的問題,スピリチュアルな問題症状の自覚検 査診 断治 療病名告知リハビリテーション手術放射線療法化学療法●検査・診断の不安●病名告知の心理的衝撃●手術の不安,術後の体力低下●放射線療法・化学療法による副作用●再発・転移の不安●再発の衝撃,死の不安●再発後の治療の不安経過観察長期生存再発治療緩和治療再発・転移治癒不能終末期死 亡治療期慢性期終末期図1-1●がん患者の臨床経過●がん経験者から看護師へのメッセージ〈動画〉コンテンツが見られます(p.2参照)

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