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頭頂連合野 頭頂連合野は体性感覚野の後方にあり,さまざまな感覚情報を統合・認知する.非優位側の障害では,半側空間無視や失行(構成失行や着衣失行)が起こる.優位側角回が障害されると手指失認,左右失認,失算,失書などをきたす.これら4症候がみられるものをゲルストマン症候群という.●側頭葉●感覚性言語中枢 優位半球の上側頭回にあるBrodmann area 22,41,42は,感覚性言語中枢(ウェルニッケ〈Wernicke〉領域)である.感覚性言語中枢が障害されると,言語理解が障害され感覚性失語が生じる.大脳辺縁系(図1.1-4) 側頭葉内側面にある海馬,海馬傍回などの大脳辺縁系が障害されると,記憶,情動,嗅覚等の障害が出現する.側頭角の近傍 側頭葉の内部には側脳室の側頭角があり(p.21 図1.2-1参照),側頭角の周囲を視放線が走行している.側頭角の近傍の障害では,対側の同名上四半盲(両眼視野の同側半分のうち,上半分だけが欠損する)の視野障害が起こる.●後頭葉● 後頭葉は視覚とその認識に関与し,後頭極にある視覚野には視放線が入る.視覚野,後頭葉内側の障害では,対側の同名半盲が生じる.両側の視覚野が障害されると皮質盲をきたし,視力は完全に失われるが,対光反射や眼底には異常がみられない.実際には見えていないのにその自覚がないものをアントン症候群という.(2)大脳皮質のその他の障害 大脳皮質が損傷されると,機能局在を反映した巣症状・徴候の他にてんかん(p.84参照)が起こりえる.また,広範囲な大脳皮質の障害では失しつ外がい套とう症候群という意識障害が発生し,前帯状回の両側性の広範な障害では無動無言症と呼ばれる意識障害が出現する.(3)脳梁の機能と障害 脳梁は左右の大脳半球の機能を連絡統合する役割を果たしているため,脳梁が障害されると,言語野が左大脳半球にある場合に,左手で触った物の名前を言うことができないなどの症状が起こる.これを脳梁離断症候群という.(4)大脳辺縁系の機能と障害 大脳辺縁系は個体や種の保存に必要な本能・情動中枢であり,摂食,性行動,情動,記憶などに関与する.大脳辺縁系が障害されると無感動,無動症,無言症などが生じる.海馬,脳弓,乳頭体の障害では記銘力障害が起こる.(5)大脳基底核の機能と障害 大脳基底核は,運動野や小脳との間で神経線維の連絡を行っている.錐体外路系の中枢であり,それぞれの筋収縮に対して促進的にも抑制的にも働く.筋緊張を調節することにより運動を調整,統御し,円滑な運動を可能にしている.大脳基底核が障害→失行,失認はp.169参照.視放線視覚伝導路は,網膜からの視神経が対側の視神経と合わさって視交叉をつくり,視索になる.視索の大部分が外側膝状体に達する.外側膝状体から後頭葉の視中枢に至る神経線維を視放線という.皮質盲とアントン症候群片側の後頭葉の障害では半盲となる.両側後頭葉の障害が起こると両側半盲となり,皮質盲と呼ぶ.皮質盲となり,見えていないにもかかわらず,見えていると主張する一種の病態失認をアントン症候群という.巣症状脳の限局した特定の部位が障害されて起こる症状.麻痺,感覚障害,言語障害,失語,失行,失認などの局所神経障害を指す.言語野は左右どちらにあるか右利きの人のほとんどは左大脳半球に言語野が存在し,左利きの人でも1/2から2/3ぐらいは左大脳半球にある.191脳・神経系の構造・機能とその障害

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