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●鑑別疾患● 重症新生児一過性多呼吸,先天性肺炎(B群溶連菌など)や先天性心疾患(肺静脈の狭窄・閉塞を伴う総肺静脈還流異常など)がある.(3)治療 必要時は酸素投与や経鼻的持続陽圧呼吸(nasal continuous positive airway pressure:N-CPAP)などの持続陽圧呼吸補助,重症例では気管内挿管し,人工肺サーファクタント補充療法を,できるだけ早期(生後30分以内が望ましい)に行う.週数のかなり早い早産児では,RDSの確定診断を行う前に,予防的に気管内に人工肺サーファクタント補充療法を行う場合もある. 人工肺サーファクタントはウシの肺から肺サーファクタント成分を抽出・精製した薬で,通常は投与後数分から数時間で児の呼吸障害は著明に改善する.人工肺サーファクタント投与後,呼吸状態の改善が認められるものの効果が不十分な場合には,追加投与を行う.通常,人工肺サーファクタント投与後より速やかに,酸素化が急激に改善する.投与後は肺血管抵抗の低下により動脈管の左右シャントが増加するため,動脈管開存症(p.152参照)症候化のリスクが高まる.そのため,心雑音の有無や程度,拡張期血圧の低下や尿量を継続的に観察する.出生72時間以降に,通常は児自身の肺サーファクタントが分泌されるようになる. RDSの発症予防目的にて,妊娠22週以降34週未満で早産が1週間以内に予測される場合には,出生前に母体へのステロイド投与を行うことが多い.人工肺サーファクタント投与前後 呼吸状態(呼吸数,陥没呼吸,呻吟など),体温,バイタルサイン(心拍数,パルスオキシメータにおけるSpO2値,血圧,呼吸数),胸部単純X線写真(RDS所見や気胸の有無),血液ガス値.投与前 在胎週数,リスク因子の有無,胸部単純X線写真(挿管チューブ先端の位置),マイクロバブルテストの結果.投与後 胸部単純X線写真(人工肺サーファクタント不均等投与などの有無),拡張期血圧,血液ガス値(CO2値),吸気時の胸の上がり,エアリーク,酸素濃度,心雑音. 基本的に治療対象は早産児のため,体温,呼吸,循環管理などの全身状態に注意を払う.人工肺サーファクタント投与前には気管内吸引を行い,投与後3〜4時間は気管内吸引を控える.人工肺サーファクタント投与後は急速に呼吸・循環動態の変化が起こる.気胸,動脈管開存症などの合併症をきたしやすい. 3ナーシングチェックポイントエアリーク肺胞構造が破綻し,肺胞から外に空気が漏れ出した状態をエアリークという.空気が漏出した部位により,気胸(胸膜腔),縦隔気腫(縦隔内),皮下気腫(皮下組織),心嚢気腫(心膜嚢),腹腔内気腫(腹腔内)に分類される.16

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