308010231
12/16

28 医療スタッフに対する法的規制は,資格法,業務法,責任法の三つに分けて考えることができる. 資格法は,医療を提供することのできる人(供給主体)を一定の学識・技量を有する者に限定する事前の法的な規制である.医療を行う上での前提となる免許制度として主に扱われている. 業務法は,実際に提供される医療そのものに関する法的な規制である.具体的には,①医療や看護の内容そのものについての規制と,②医療行為や看護行為を実際に行うことに付随する規制とに分けられる.①の医療や看護の内容そのものについては,法は,事前の規制を行わない,というのが原則である.しかし,例えば,看護過誤(医療過誤)に対する法的責任が追及されるときに,事後的に医療・看護の内容そのものが,法的に規制されることがある. ②の業務を行うに際して医療スタッフが守るべき付随的義務は,各医療スタッフを規制するそれぞれの法律や刑法などに規定されている(付随的義務については,各医療スタッフに関する法律で解説している). 責任法は,すでに行われた医師・看護師の行為に対する事後的な法的規制である.その中心となるのは,看護過誤(医療過誤)に対する民法上の損害賠償や,刑法上の業務上過失致死傷罪等の責任が問われているときである(➡本書8章で扱っている). 各医療スタッフに共通する事項である,資格法に関する免許の基本的な考えかた・枠組みと,業務法の付随的義務に関する守秘義務について概説する.(1)免許の意義 例えば,医師の行う外科手術は,人の身体を傷つける行為(侵襲行為)である.このように,医療スタッフの行う行為は,生体の内部環境の恒常性を乱す可能性がある刺激を伴うことが多く,本質的に危険な行為である.このような行為を誰でも自由勝手に行ってよいということになると,人の生命・身体は危険にさらされることになる.そこで法は,それを特定の教育と訓練を受けて,一定の知識と技能とを有していると認められた者(すなわち,免許を持っている者)だけに「業として(反復継続の意思をもって)」行うことを認めることとした. 医療スタッフの免許の中には,免許を持っていない者がその業務を行うことを禁止する業務独占と,免許を持っていない者が,その名称や類似する名称またはそれに紛らわしい名称を使用することを禁止する名称独占とがある.医師の免許が業務独占の例である.医師法17条は,医師でない者が医行為を業として行うこと(医業)を禁止し,その業務を医師に独占させている.また,保健師の免許が名称独占の例である.保助看法29条は保健師の免許を持たない者がその業務(保健指導)を行うことは認め 1医療スタッフに関する法の枠組み 1法的規制のありかた医療従事者を指す用語医師以外の医療従事者を指して「コメディカル」という用語が使われている.しかし,本書では,医師,歯科医師を含めた,薬剤師,看護師その他の医療の担い手を広く指して「医療スタッフ」という用語を用いている.物・場所に関する規制業務法は,医療スタッフに対する規制だけでなく,物・場所に対して規制するものもある.具体的には,薬剤や医療機器等に関する規制や,医療が行われる施設ないし場所等に関する規制がある(➡4章「物・場所等に関する法律」で扱っている).免許の法的性質免許の法的性質は,医師の免許を念頭に,「許可」であるといわれている.「許可」とは,「法令による一般的禁止(不作為義務)を特定の場合に解除し,適法に,特定の行為をなすことを得しめる行為をいう」と定義されることがある. 2免 許医師法17条医師でなければ,医業をなしてはならない.1章 チーム医療と法の構造

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る