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291チーム医療と法の構造るが,保健師の名称またはそれに類似する名称を用いて保健指導の業務を行うことのみを認めていない.加えて,保健師またはこれに紛らわしい名称を使用すること自体も禁止される(保助看法42条の3).(2)医療スタッフの免許 医療スタッフの資格を得ようと思う者は,厚生労働大臣または都道府県知事(以下,免許付与者という)の免許を受けなければならない. 免許を受けるためには一定の要件を満たすことが必要である.その要件には,積極的要件(それを満たすことが必要なもの)と,消極的要件(それに該当していると免許を受けることができないもの)とがある.●積極的要件● 免許取得の積極的要件は,所定の学業を修了し,免許付与者の実施する試験に合格することである.試験は,その医療スタッフとして必要な知識および技能について行われる.この試験に合格することにより,その医療スタッフとしての能力が一応担保されることになる. 試験を受けるためには,さらに一定の条件を満たし,受験資格を得ることが必要である.各医療スタッフごとに規定された所定の大学・学校において,所定の期間に所定の学科を修めるか,所定の養成所を卒業することが要求されるのが原則である.●消極的要件● 免許取得のための消極的要件は,欠格事由に該当しないことである.欠格事由には,絶対的欠格事由と相対的欠格事由とがある.絶対的欠格事由 絶対的欠格事由に該当する者には,免許が与えられることはない.未成年者のみがそれに当たるが,これを絶対的欠格事由とする医療スタッフは,医師,歯科医師,薬剤師だけである.その他の医療スタッフには,絶対的欠格事由に関する規定は存在しない.絶対的欠格事由の見直しかつて「つんぼ(耳の聞こえない者)」,「おし(口がきけない者)」,「盲の者(目が見えない者)」,「精神障害者」が医師,看護師等いくつかの医療スタッフの絶対的欠格事由として規定されていたが,障害者の社会経済活動への参加を図るため,平成13年の法改正によって全て削られた.現在「つんぼ」「おし」「盲」は差別用語とされ,通常は使われることはない.また,医師,歯科医師,薬剤師等は,成年被後見人,被保佐人が絶対的欠格事由に当たるとされていたが,令和元年の法改正により削られた.これらの者は,相対的欠格事由の一つである「心身の障害によりその業務を適正に行うことができない者」に当たるか否かが,個別的に審査されることになる. 業務独占の目的は,国民の生命,安全,健康の保持という利益を保護することにあり,特定の個人や業界の保護のためではない.免許を有する者がその業務を独占するという利益を受け,結果としてその者に強い法的な保護が与えられる状態が生ずるとしても,その利益は,上に述べた目的を達成するためにもたらされた結果にすぎず,各医療スタッフの権利として認められたものではないのである(これを「反射的利益」という). 名称独占の目的は,これらの医療スタッフにそれぞれその名称を独占させることにより誇りと責任とを自覚させ,他方,無資格者がこれらの名称を使用することにより生ずる弊害(例えば,その職業の社会的信用を悪用することによって生ずる事故や犯罪)を防止するためであるといわれている.また,一定の教育を受けて一定の試験に合格した者に対し,たとえ名称独占だけであったとしても,免許を与えることにより,その者が当該の業務につき一定の能力を有していることを担保し,それにより医療スタッフの資質の向上を図ることに寄与するという機能をも果たしている.業務独占の目的名称独占の目的保助看法29条保健師でない者は,保健師またはこれに類似する名称を用いて,第2条の規定する業(すなわち,保健指導)をしてはならない.

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