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 「法律を学ぶには,暗記してはだめだ,理解しなければならない.」 ある著名な法学者の言葉である.この言葉は,看護学生や看護師が法律を学ぶ場合にも当てはまる. それでは,法律を理解するためにはどうすればよいか.これに対する唯一絶対の答えがあるとは思えないが,少なくとも,看護をめぐる法と制度の枠組みの中で,今,学んでいる個々の法律が,どのような位置づけにあるかを確認することが必要であろう.そのために,MAP②やMAP③が役に立つ.また,これらのMAPは,看護をめぐる法の森の中で迷子にならないための案内図として役立つであろう. 今日,コンプライアンスの重要性が指摘されているが,「法律に規定された内容を遵守さえしていればよい.」というのでは十分ではあるまい.およそ法律は,社会や歴史の動きに無関係に存在しているわけではない.必ず,その法律が制定された歴史的・社会的背景があり,目的がある.本書では,この点に十分意を用いたつもりである.このことを理解することが,個々の条文の理解と適切な解釈につながるからである.そして,このような理解を踏まえて,「法令を遵守する」ことこそが必要なのではないかと思う. しかし,看護師には,もう一歩進んで,よりよい看護実践のために,いかに法律を使いこなすかという視点を持って欲しい.本書は,看護基礎教育の教科書であると同時に,現場に出た看護師が,実践の中で法律を使いこなす場面でもおおいに活用して欲しいと思っている.MAP①は,そのための道しるべともなるであろう. 「看護師が法律をキライにならないような教科書」をつくれないものか,編者一同が目指した第一の目標であった. しかし,「言うは易く行うは難し」である.法律の解説である以上,正確さはマストの条件である.正確さを失わずにわかりやすく説明する,これは至難の業である. なぜ,法律がキライになるか.法律の条文は,読みにくい,わかりづらい,むずかしい.なるほど,その通りかもしれない.法律の条文が,事柄を正確に,論理的に表現するために,時としてまわりくどく,そして法律に独特の言葉の使い方をしていることは否定できない.しかし,そのことが法律ギライを生んでいるのだとしたら,条文を抜き書きするだけで解説に代えることは避け,できるだけわかりやすい言葉で解説しようという編集方針で臨んだ.そのために,正確性が確保できているかをおそれている.今はインターネット等で容易に法律を検索できる便利な世の中である.本文中に関連する条名を掲載するよう心がけたので,関心を持たれた方は是非,直接,条文を参照してもらいたい. ご協力をいただいた多くの執筆者には,編者として,多くの無理難題を,そして,時として失礼なお願いをしてしまったことをお詫びするとともに,心よりの御礼を申し上げたい. ここにようやく,看護をめぐる法と制度を世に送り出すことができる.読者のみなさまの『異論・反論・オブジェクション』を糧に,さらによりよいものにしていければと思う.編者一同はじめに

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