師や助産師のケアを探したり,良いとされている食べ物を食べたり,医療者の指示に従ったりする.②他者からの受容 パートナーが妊娠を喜ぶと,パートナーから大切にされていると感じる.パートナーに妊娠を受容されることで,母親となることを受け入れ,家族が赤ちゃんを迎え入れることに夢中になり,家族の関係性を作り直す.したがって,妊娠を告げたときのパートナーの反応は重要である.また,実母からの受容とサポートも重要である.サポートによってエネルギーをもらい,妊娠に集中することができる.③まだ見ぬ子との絆の形成 絆の形成のプロセスは,妊娠を受け入れたときから始まる.特に,胎動を感じたり,超音波で胎児を見たりすると,実際に子どもの存在を確認できるようになる.妊娠末期になると,胎動から胎児が寝たり起きたりしていることがわかるようになり,子どもの性格や,母親としてのイメージを描く.④自らを与えること 与えることは,母親らしさの理想的な要素である.子どものために栄養を取るなど,与えることを学ぶようになる.家族からの思いやりのこもった行為をうれしく思い,周囲からの愛情を受け取ることによって,今度は自らが与えることを学ぶ.●出産後の移行● 出産後は,①取り込み期,②定着期,③解放期へと移行していく.①取り込み期(taking-in) 取り込み期は,産褥2〜3日をいう.出産による身体的な苦痛や疲労などで,子どもの世話どころではないこともある.女性は受け身で依存的になり,自分に関心が向いている特徴がある.この時期は,気力や体力を取り戻す時期である.新しい役割を考えていくために,今回の妊娠・出産を人に話して整理しようとする人もいる.考えが堂々巡りしたり,出産中の記憶を断片的に思い出せなくなることもある.②定着期(taking-hold) 定着期では,子どもの世話に関心を向けるようになる.移行段階がはっきりせず,産後数時間で定着期に入る人もいる.自立しようとするが,まだ怖かったり,自分だけでできるという自信がもてないことが多い.自信をもつには,人から褒めてもらったり,認めてもらったりする必要がある.③解放期(letting-go) 解放期では,空想ではない現実の子どもを受け入れ,モデルに縛られることなく自分で子どもに合わせられるようになる.また,子どものいないかつての自分をあきらめる.妊娠期と同様に,ある程度の悲嘆と,さまざまな関係への再適応が必要になる.(3)母親役割獲得から母親になることへ かつて母親役割は,産後数カ月以内に獲得されるものと考えられていたが,母親という役割は,生涯にわたって多様な形で遂行されていくものである.したがって,現在では,母親の役割を獲得するというよりも「母親になること」と考えるほうが妥当であると,マーサー(Mercer, R.T.)は述べている2).151母性看護の基盤となる概念
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