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 ナーシング・グラフィカ母性看護学は,初版が刊行されてから10年以上が経過しました.その間に母性看護を取り巻く社会情勢は大きく変わり,看護基礎教育においても,生命をめぐる倫理的・法的・社会的課題が大きく取り上げられるようになっています. このたび本書を大幅改訂し,中心テーマを「いのちの創造」の看護学として,母性看護学①『概論・リプロダクティブヘルスと看護』,母性看護学②『母性看護の実践』,母性看護学③『母性看護技術』の3冊を作成いたしました. 本書『概論・リプロダクティブヘルスと看護』は,いのちを育む土台となるリプロダクティブヘルス(性と生殖の健康)について取り上げます.●母性看護およびリプロダクティブヘルスの中心概念 看護師の責務は,その人の人生の体験としての健康課題に関心をもって関わることです.看護師は,見えるものだけでなく,見えないものにも注目し,目に見えないものを見ようとする努力を惜しみません.母性看護は,妊娠・分娩・出産を通して「その人らしさ」,その人の「母性や父性」,その人が経験する「新しい役割」「他者への愛着」「親と子の相互作用」に関心を寄せます.さらに人格形成に深く関わる「セクシュアリティ」「ジェンダー」を学習することを通して,人の本質や奥底にあるものを洞察する力が育つことを願っています. また,本書は,ヒトの発生・性分化のメカニズム,性と生殖の健康,女性特有の健康上の危機について丁寧に解説しています.リプロダクティブヘルスの中心概念を理解するには,女性の心身の成長,生殖過程,特有の病を理解する必要があります.●リプロダクティブヘルスの倫理・法と制度・歴史的動向 2018年に旧優生保護法時代の障害者に対する強制不妊がクローズアップされました.女性,子ども,障害者に関する法や制度は時代とともに変化しますが,なぜこのような人権侵害が続けられたのでしょうか.本書では,人工妊娠中絶,出生前診断,生殖補助医療の現況,倫理的課題,関連する法律や社会的課題,看護師の倫理的配慮について解説します. 近年,医療機関だけでなく,社会のあらゆる分野で倫理的な問題が生じています.最終章では,倫理分析を取り上げました.この章を通じて困難な問題と向き合い,苦悩する人々に寄り添い,倫理的判断をするための基礎的な力を養います. 母性看護学は,いのちが創造され,いのちを産み育む人々を支える看護です.本書を通じて,学生はもちろん,先生方,臨床指導者の皆様に母性看護の奥深さを実感していただけたら幸いです.中込 さと子はじめに

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