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 人の生命活動は呼吸をすることによって成り立っています.これは人体のすべての臓器が酸素を必要としているからです.しかし,酸素を取り込み二酸化炭素を排出する,シンプルな作業をするように思える呼吸器官は,非常に複雑な構造と機能をもっています.また私たちは無意識に呼吸をしていますが,ひとたび呼吸器官に障害が起こると,呼吸困難という症状で患者さんは呼吸を意識するようになり,何かをしようとしても十分にできず,患者さんのQOLは一気に低下してしまいます.その時は身体的評価とともに,苦痛を緩和するケアや残存した機能を生かすリハビリテーションを行います. 本書は看護を学ぶ学生を中心に,学生に関わる教員,看護師(実習指導者)を主な対象としています.そして願わくば,看護師になってからも,時々本書を参照していただけることを期待しています.1部では呼吸器の構造と機能,呼吸器疾患特有の症状や検査,処置と看護,いわゆる必修項目としての内容をなるべく図や動画を用いて理解しやすいように解説しています.2部の主要な呼吸器疾患とその看護では,臨床で疾患の看護を実践してこられた看護師の方を中心に,わかりやすく執筆をしていただきました.また本書の特徴として,3部で呼吸に障害を抱えながらも生活の場に戻るためのケアとして,呼吸リハビリテーションと生活支援,そして意思決定支援についての解説に多くを割きました.4部の事例は手術を受ける急性期患者ケアと回復から地域連携への慢性期ケアの2事例で,アセスメントの視点,エビデンスに基づいたケアの展開を示しています. 呼吸は神経系や筋運動にも大きく影響を受けます.しかしこの部分は分量のため割愛しています.ぜひ他巻と合わせて学習していただくことをお勧めします. より良い看護実践は,知識に基づく適切な判断と,病を抱えながらもその人らしい人生を送ることを支える看護の視点を統合したケアと考えます.本書がその看護実践を支える書になることを願っています.編者を代表して 宇都宮明美はじめに

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