心不全1heart failure1心不全とは1定義 心臓は酸素や栄養分などを含んだ血液を全身に送り出すポンプの働きをしている.このポンプ機能が何らかの原因で損なわれ,全身の臓器の需要に対応する十分な血液を供給できなくなった状態を心不全(heart failure)という.慢性心不全(chronic heart failure)は,すべての心疾患の終末的な病態で,十分な血液を送り出せないために肺静脈うっ血や体静脈うっ血を来し,労作時呼吸困難,息切れ,四肢の浮腫などの症状が出現して日常生活を著しく障害する.2原因と基礎疾患 心不全の原因で最も多いのは,心筋梗塞などの虚血性心疾患である.高血圧,弁膜症,心筋症,不整脈などがその他を占めるが,その基礎疾患は多岐にわたる(図5-1). 特に肥満やメタボリック症候群では,生活習慣の乱れがインスリン抵抗性,動脈硬化,高血圧などを引き起こす.これらは睡眠時無呼吸症候群や心房細動の原因ともなり,いずれ心不全を引き起こすことが予想される.3心不全の病態・メカニズム 心不全を学ぶにあたり,まずは心機能を決定する因子とその代償機構について解説する.心拍出量は何で決まるのか 心拍出量を決定する因子として,前負荷,後負荷,心筋の収縮力,心拍数があり,心拍出量は次のように表される.睡眠時無呼吸症候群については,p.168参照.図5-1■心不全の主な原因心臓への過負荷•高血圧•弁膜症•先天性心疾患 など心筋の障害•心筋梗塞•心筋症•心筋炎 など不整脈(血行動態の悪化)•洞機能不全•頻拍症•心房細動 など代謝異常•甲状腺機能異常•アミロイドーシス•ファブリー病 など塩分・水分排泄能低下•腎機能低下•腎不全 など全身疾患•膠原病•サルコイドーシス慢性的な低酸素症•貧血•睡眠時無呼吸症候群•慢性肺疾患 など外的因子•脱水•過剰輸液•大量出血 などその他•薬剤(抗がん薬)•アルコール•肥満・精神疾患 など心臓に原因心臓以外に原因140
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