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5心不全 1分間の心拍出量(CO)*=1回拍出量(SV)*×1分間の心拍数(HR)* 1回拍出量は,心臓に戻ってくる循環血液量(前負荷)と心臓から血液を出す際の抵抗(後負荷),および心臓の収縮力が関係し,心拍出量を一定に維持するために調節されている.前負荷(容量負荷:心臓に戻ってくる血液量) 収縮開始前に心臓にかかる負荷を指し,心筋の収縮前準備段階での長さを意味する.心室に流入する血液が多いほど前負荷は大きくなり,逆に出血や脱水によって循環血液量が減少すれば前負荷は小さくなる.そのため,前負荷は容量負荷とも呼ばれ,循環血液量,静脈還流量など心臓に戻ってくる血液量で決まる.後負荷(圧負荷:心臓から血液を出すときの抵抗) 心臓が収縮して血液を全身に拍出しようとするときに受ける抵抗で,心筋壁にかかる壁応力(伸展ストレス)を意味する.出口である弁の狭窄や血管の動脈硬化,末梢血管収縮によって末梢血管抵抗が増大している場合などで後負荷は増大する.そのため,後負荷は圧負荷とも呼ばれ,末梢血管抵抗,血圧,大動脈弁狭窄症の有無など,心臓から血液を出すときの抵抗で決まる. 後負荷が大きいほど心臓は強く収縮しようとして仕事量が増大するが,1回の拍出量は減少する.この際に,心拍出量を維持するために心拍数が増加する.心収縮力(ポンプを押す力) 心臓の収縮機能は,心筋障害,心臓への負荷,不整脈,貧血,代謝異常など,さまざまな要因で低下する.収縮能が低下した場合,それを代償しようとするしくみが働き,前負荷を上昇させて心拍出量を維持しようとしたり,後負荷を上昇させて血圧を維持しようとする.心拍数(1分間の心拍数) 心臓の拍動は,成人では1分間に60~90回程度である.交感神経刺激で心拍数は上がり,副交感神経刺激で心拍数は下がる.心拍出量を一定に保つために心拍数が調節されている.代償のメカニズムには何があるか 慢性の心筋障害など何らかの原因によって,心臓のポンプ機能が低下し心拍出量が減少すると,重要臓器への血流供給が不足することになる.このような状態を解消し心拍出量を一定に維持するために,以下のような代償機構が働く.フランク・スターリングの法則* 前負荷を増やすことで心機能を維持しようとするしくみである.心室内に流入する血液量(すなわち前負荷)が増加し,心筋壁が強く引き伸ばされて心筋の長さが増すと,心筋の収縮力が強くなり,心室の1回拍出量が増加する.交感神経系,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系 交感神経系が亢進して末梢血管を収縮させ,静脈血流量を増加させる.同時にレニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系も活性化され,腎臓心拍出量Cardiac output:CO拍出量Stroke volume:SV心拍数Heart rate:HRフランク・スターリングの法則Frank-Starling mechanism機序ともいう.*141

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