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生じる.口腔粘膜には多数の口内炎ができ,全体に発赤や腫脹が出現する.口腔内は不潔となり,口臭が強くなる.口腔内に自発痛や接触痛が強く,顎下リンパ節が腫脹することもある.全身状態によっては入院が必要となる. 治療は栄養管理と抗ウイルス薬の投与を行い,口腔内は含嗽薬やトローチで清潔を保つ.口腔カンジダ症 口腔カンジダ症は,カンジダ・アルビカンスという真菌によって起こる口腔感染症である.乳白色の点状,線状の白苔が粘膜表面に付着する(図5-3).白苔の生じない口腔カンジダ症もあり,舌乳頭の萎縮や粘膜の紅斑などの病状に疼痛を伴うことがある.口角の発赤,びらんを認める口角炎も口腔カンジダ症が原因となることがある. 治療は抗真菌薬の内服,口腔内の清掃,含嗽薬を使用する.口腔扁平苔癬 口腔扁平苔癬は,口腔粘膜の炎症性角化性病変である.頰粘膜に多く,舌や口唇にも生じる.粘膜の角化しているところにレース状の白色病変,周囲粘膜の発赤やびらんを認める(図5-4).治療は含嗽剤や副腎皮質ステロイド含有の軟膏を使用する.歯科の金属によるアレルギーが原因となることもあるため,金属アレルギー検査を行うこともある. そのほかに,頭頸部癌に対する放射線療法,がん薬物療法(抗がん薬,分子標的薬)の副作用(有害事象)として生じる口内炎がある.軽症の場合もあるが重度の口内炎を起こすこともあり,病状に応じた対応が必要である.2口内炎の患者の看護 口内炎はさまざまな要因で生じる.口腔ケアは,口腔内の清潔と保湿が重要であり,ブラッシングと含嗽が主体となる. 口内炎に伴う疼痛によって口腔ケアを継続できなくなると,食欲や治療への意欲を減退させ,二次感染のリスクを高めることになる.柔らかめの歯ブラシ図5-3■口腔カンジダ症舌背には白苔が付着しており(○),硬口蓋から軟口蓋にかけて粘膜の白苔,発赤()を認める.図5-4■口腔扁平苔癬左頬粘膜にレース状の白斑,周囲に発赤(○),左下顎大臼歯の外側の頬粘膜にびらん()を認める.164

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