朝のナースステーションでの看護師の患者申し送りに,朝の回診とカンファレンスを終えた医師が参加し,その日に解決すべき課題と目標を共有するのが日常の風景となりました.私自身が,合同申し送りを開始したのは数年前からですが,医師と看護師など医療従事者がそれぞれの患者さんの想いと解決すべき課題と目標を共有することで,ケアと医療の提供がより効果的になったと実感しています.一方で,医療従事者間の疾患に対する知識の差と,疾患や患者さんに対するアプローチ方法が,専門職によって異なっていたり,理解されていなかったりする場合もあることに気づきました. 今後さらに,患者ケアや医療の質を上げ,かつ,勤務時間内にその日の課題を解決するためには,医療従事者の疾患に対する共通理解と,疾患や患者さんに対するアプローチ方法の違いを各人が認識し,配慮することが重要になります. さて,消化器は構造上,口腔から肛門までの消化管,肝臓,胆・膵,それらを取り巻く腹膜・腹壁で構成され,摂取・消化・吸収・合成・分解の機能を果たし,人体の維持・発達を支えます.近年,治療標的を狙い撃ちする分子標的治療薬が増加し,また,内科,外科を問わず治療手技も高度となり,治療効果が高まったため,患者さんは恩恵を受けられていることは大変幸せなことですが,治療期間が長期化する一方で,専門性が高くなると細分化する傾向が強くなるため,一人の患者さんを全体としてとらえることがより難しくなっています. そこで,本書は,消化器領域の医学教育者に結集いただき,上記課題に効果的に対応できる構成と内容にしました.まず,看護学教育モデル・コア・カリキュラム,看護師国家試験出題基準に準拠し,看護師として知っておくべき知識の範囲を明確化して本文を構成し,範囲を超えるが実臨床では必要な内容を「プラスα」で明記しました.また,日々発生する患者さんの課題を医療従事者が協働して解決する能力が現場では必要であり,「臨床とのつながり」という臨床実地問題を作成しました.ぜひ,看護学生同士,または,医学部生と意見交換をしてください. 本書は,看護学と医学の著者が何度もやり取りしながら,両者の視点も学習できるよう配慮しました.多職種が患者さんの想いと疾患の理解を共有しながら,それぞれの専門性を発揮していく礎となれば,編者としては幸甚です. 最後に臨床,教育,そして研究の現場でご多用のなか快く執筆をお引き受けくださった筆者の先生方をはじめ関係各位に,心より感謝申し上げます. 三原 弘医学の編者からの応援メッセージ
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