308010290
3/20

 血液疾患,免疫疾患,感染症は,呼吸器,循環器,消化器などの臓器に付随する疾患体系とは異なり,その病態は全身に及び,また症状も多彩であり,なかなか理解しにくい分野である.そこで,本書は,その理解のしやすさを焦点に置き,これまでにないさまざまな工夫を凝らしている. 第1に,第2・5・8部に配置した,見開きの図解ページである(一部,見開きでないものもある).このページによって,その後に述べられる疾患の概念をつかめるようになっている.情報を過大に盛り込むことなく,一方で,その章の概略を理解するのに必要な部分はほぼ盛り込んである. 第2に,限られた時間で効率よく学習を進められるようにした.前述の図解の考え方を本文にも適用し,内容は「詳しすぎず・簡略すぎず」ということを目指した.用語の説明やトピックスは,欄外に用語解説,plusαとして記載したことで,図と本文だけで必要なことを理解でき,スピード感のある学習を進めることができる. 第3に,随所に図を配置し,前述の図解ページと合わせて視覚的な情報として提供することにより,文章による説明が生きるようにした.本文を読み進めながら,必要に応じて図解ページを参照することにより,いま理解しようとしている本文の内容が,例えば「病態」についてであれば,その「病態」と「症状」「疾患」とがどのように関係するのかを俯瞰的に理解することができる. 第4に,医師と看護師,それぞれの視点から解説を展開した.これにより,医師の解説では,病態理解のために必要な,臨床に忠実かつ正確な医学的知識を得ることができ,看護師の解説では,看護における具体的な治療の援助や,患者のQOL(qualityoflife)に対するアプローチ,家族や他職種との関わり方などを学習することができる.ひいては,それぞれの知識の統合により,多角的な学びにつなげることができる.なお,根拠に基づく看護の提供のために,より重要と思われる部分は医師と看護師の解説に意識的にある程度の重なりをもたせている. 第5に,章末に「臨床場面で考えてみよう」という質問形式のコーナーを設け,知識の確認ができるようにした.まずこのコーナーで知識のレベルを確認し,その後に本文に戻って知識を定着させるといった学習方法も可能である. 本書は,それぞれの分野の第一線で活躍されている医師と看護師・看護教員に執筆をお願いした.知識として習得するだけでなく,看護師として臨床現場に出た後にも役立ててほしいと考えている. 「ナーシング・グラフィカEX」シリーズの一冊として本書を出版する機会が与えられたことを喜んでいる.関係の皆様に深謝する.薊 隆文矢野久子はじめに

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る