塞栓性 頸動脈や心臓の血管に生じた血栓が遊離して血流に乗り,脳内の動脈を閉塞する病態.血行力学性 より心臓に近いほうの血管に閉塞や重度の狭窄が生じると,急激な血圧の低下や脱水などの循環不全が起こったときに,遠いほうの血管の血流が減少し,梗塞が生じる病態.臨床病型アテローム血栓性脳梗塞 頭蓋外あるいは頭蓋内主幹動脈のアテローム硬化病変に起因する脳梗塞で,発生機序としては血栓性,塞栓性,血行力学性の3種類すべてで起こり得る.全脳梗塞の29.7%を占め,高血圧,糖尿病,脂質異常症(高脂血症),喫煙などが危険因子とされている.ラクナ梗塞 頭蓋内主幹動脈から分岐する穿通枝の閉塞に起因する小梗塞.発生機序としては血栓性,塞栓性に起こり得る.全脳梗塞の27.9%を占め,高血圧との関連が強い.心原性脳塞栓 不整脈(主に心房細動),弁膜疾患などによる左心系の血流停滞を原因とする心内塞栓源に起因する脳梗塞.発生機序は塞栓性に起こり得る.全脳梗塞の28.3%を占める.その他の脳梗塞 動脈解離やもやもや病,血管炎など,上記の臨床病型以外の原因に起因する脳梗塞.発生機序も多様である.全脳梗塞の約10%を占める.一過性脳虚血発作(TIA) 一過性脳虚血発作(transient ischemic attack:TIA)は,発症後24時間以内に消失する,一過性の脳・網膜虚血による局所神経症状と定義されている.一過性に,運動障害,構音障害,失語などの脳梗塞の症状や,網膜虚血による視力障害を生じる.大半は,30分以内に症状は消失する.発生機序としては,脳梗塞と同様に血栓性,塞栓性,血行力学性がある.TIA発症後は48時間以内に脳梗塞を発症するリスクが高いため,迅速に発生機序を診断し,治療を開始する必要がある.アテローム血栓性脳梗塞心原性脳塞栓ラクナ梗塞梗塞巣動脈硬化塞栓梗塞巣梗塞巣図5-2■脳梗塞の臨床病型116
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