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 本書『ナーシング・グラフィカEX 疾患と看護⑤ 脳・神経』は,脳・神経の疾患と看護について,学生が手に取り納得できる,あるいはそうだったのかという感想を持てることを期待して作り出されました. まず,脳・神経は「脳神経」では駄目なのかという素朴な疑問が湧いてくると思いますが,そう,ダメなのです.本書では,広く全身の神経と頭蓋内の脳神経についての疾患と看護を扱うため,このようなタイトルとさせていただきました.執筆者は,診療科目でいう脳神経外科と脳神経内科を専門とし,診断や治療に当たっている医師の皆様方にお願いしました.また看護については,臨床で中心となり活躍している看護師の方,あるいは大学で脳と神経に関係する看護学の講義に携わっている諸先生方にお願いしました.現在行われている最先端の治療や看護を中心に,執筆いただいています. 構成においては,脳機能のどの部分を学習しているのか,どの組織への侵襲であるのかが一目でわかる図解やイラストを付け,字面のみでは理解しにくい脳・神経疾患をもつ患者の病態と看護を視覚的に理解できるよう心掛けました.さらに「臨床場面で考えてみよう」というコーナーを設け,臨床実習で遭遇するであろう場面について解説し,事前学習で活用できるようにしています.脳・神経疾患患者の病態や治療の理解をもとに,その看護を実践するための根拠として,幅と深まりのあるテキストとなるよう心掛けました. 第1部では,脳・神経の構造と機能,観察される症候,脳・神経領域でよく用いられる検査と治療について詳しく解説するとともに,看護の記述を加え,看護学生がわかりやすく理解できるような構成にしています.第2部では,脳・神経領域で遭遇する疾患や看護師国家試験で必修の疾患について網羅しています.脳血管障害,脳腫瘍,頭部外傷,水頭症,感染性疾患,脊椎・脊髄疾患,神経変性疾患・不随意運動症,認知症,末梢神経疾患,脱髄性疾患,筋疾患,てんかんについて,脳・神経疾患とその看護を解説しました.第3部では,看護事例として臨床で遭遇するであろう四つの代表的な疾患を取り上げました.脳梗塞患者,くも膜下出血患者,パーキンソン病患者,筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者について,アセスメントの統合や患者の問題の抽出過程,看護の実際を,臨床に則して紹介しています.臨床実習への橋渡しとなるよう頻度の高い看護問題について精選しました. さらに本書は,看護学生の講義や実習でのテキストとしてだけでなく,新人看護師の,あるいは新人看護師を指導するための資料として,さまざまな学習状況で活用していただけるものと考えております.本書を用いて,楽しくかつ深く学習を積み重ねていただけることを心から希望しております.編者を代表して 田村綾子はじめに

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