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屈折異常・調節異常,眼位・眼球運動異常5屈折異常・調節異常11近視 myopia1疫学 近視の発症には人種差があり,アジア人に多く,白人や黒人に少ないことが報告されている.日本は世界的に見ても近視国である.近年,韓国や台湾,シンガポールなど,近隣のアジア諸国でも近視人口の増加がみられる.小児の近視人口の増加は,将来の失明原因の上位である病的近視の人口の増加につながる可能性があり,問題となっている.生活環境の変化に伴い,近視の低年齢化,強度化が進んでおり,裸眼視力0.3未満の小学生が過去30年間で約3倍に増加している.2病態・原因・症候 近視とは屈折異常の一つで,外界から平行光線が無調節状態の眼に入ったとき,網膜よりも前で焦点を結ぶものである.遠くのものは焦点が合わずぼやけてしまうが,眼前有限距離*のものは焦点が合うためよく見える(表5-1). 近視には,角膜の曲きょく率りつ半径が小さいことや,水晶体の屈折力が強いことが原因となって起こる屈折性近視と,眼がん軸じく 長ちょうの伸展が原因で進行する軸性近視がある(図5-1).近視の症候には,近視性コーヌス*,傾斜乳頭*,網膜剝離,強度近視による脈絡膜萎縮,近視性脈絡膜新生血管,黄斑変性症,後部ぶどう腫,固定内斜視などがある.3診断・検査・治療 検査では調節を介入させない状態で,他覚的屈折検査と自覚的屈折検査を行う.必要があれば,調節麻痺薬を点眼した上で屈折値を測定する.軸性近視の場合は眼軸長の測定も有用である. 治療は,眼鏡やコンタクトレンズを装用して屈折矯正をする.屈折矯正手術には,レーシック(LASIK)や有水晶体眼内レンズ挿入(ICL)などがある. 近視の多くは進行する.さらに,強度近視は失明原因の上位となっているため,近視の進行を抑制する治療法の研究が進められている.表5-1■近視の程度による分類弱度近視−3.00D以下中等度近視−3.00D超~−6.00D以下強度近視−6.00D超~−10.00D以下最強度近視−10.00D超~眼前有限距離網膜より前方で焦点が合う距離.近視性コーヌス視神経乳頭にみられる斑面をコーヌスという.輪状もしくは耳側にみられるコーヌスを近視性コーヌスという.傾斜乳頭視神経乳頭の萎縮により斜めになっている状態.*図5-1■屈折性近視と軸性近視水晶体厚の差眼軸長の差軸性近視屈折性近視68

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