5屈折異常・調節異常,眼位・眼球運動異常2遠視 hyperopia1疫学・病態 新生児では約60%以上が遠視であり,生後3カ月でその遠視量はやや増加傾向を示し,その後は遠視量(+2.00~+3.00D)が減少する経過をたどる. 遠視とは屈折異常の一つであり,外界から平行光線が無調節状態の眼に入ったとき,網膜よりも後方で焦点を結ぶものをいう(表5-2).無調節状態において眼後方有限距離に焦点があるため,外界からの光はどこにも焦点が合わない.小児の中等度以上の遠視は弱視,あるいは調節性内斜視になる可能性があるため,早期に全遠視度数を正確に測定し,屈折矯正する必要がある.2原因・症候 遠視には角膜の曲率半径が大きいことや,水晶体の全屈折率が小さいことが原因の屈折性遠視と,前ぜん房ぼう深度が浅いことや,眼軸長が短いことが原因の軸性遠視がある(図5-2).先天小眼球,眼窩内腫瘍,扁平角膜,角膜瘢はん痕こん,外傷,水晶体脱臼が原因で遠視になる場合がある. 乳幼児では,調節性内斜視や部分調節性内斜視となることもある.遠視の未矯正の場合は,視力低下や眼精疲労などがある. 一般に,前房が浅いと閉へい塞そく隅ぐう角かく緑内障になりやすい.浅前房の場合は急性緑内障発作を誘発する恐れがあるため,散瞳薬の点眼には注意が必要である.3診断・検査・治療・予後 調節を介入させない状態で,他覚的屈折検査と自覚的屈折検査を行う.調節力が十分ある若年者の場合は調節麻痺薬を点眼し,調節を介入させない状態での静的屈折検査として他覚的屈折検査と自覚的屈折検査を行う. 治療は,眼鏡やコンタクトレンズによる屈折矯正をする.乳幼児の遠視は成長とともに正視化し,小学生になると約50%に軽減する.強度遠視は網膜血管の異常,黄斑部の発育不全,後極部網膜ひだ形成などを合併することがある.3乱視 astigmatism1疫学・病態 アジア人では約40%の乱視が報告されており,日本人では約70%が2.00D未満の乱視といわれている.40歳未満の約90%が直ちょく乱らん視しで,倒乱視は約4%である.50代になると直乱視は約55%に減少し,さらに70代になると約30%に,80代では約20%まで減少する.一方,倒乱視は70代では約50%に増加表5-2■遠視の程度による分類弱度遠視+3.00D以下中等度遠視+3.00D超~+6.00D以下強度遠視+6.00D超~+10.00D以下最強度遠視+10.00D超~図5-2■軸性遠視と屈折性遠視眼軸長の差軸性遠視眼軸長が短い屈折性遠視正 視69
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