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 本書で扱う眼,耳鼻咽喉,歯・口腔,皮膚に共通するのは,視覚・聴覚・平衡覚・嗅覚・味覚・触覚・圧覚・痛覚・温冷覚など,外界からの情報を受け取り脳に伝える感覚器官としての役割です.これらの器官のどこかに障害が生じ,その機能が正常に果たされなくなると,たちまち日常生活に支障を来すことを多くの人が体験的に知っているのではないでしょうか.顔面や頸部に位置する器官の障害では,飲水や食事,会話,呼吸さえもできなくなることがあります.皮膚の疾患では,激しいかゆみや整容的な悩みが生じることもあります.まさにQOL(quality of life)と直結した領域といえるでしょう. 眼や耳鼻咽喉,口腔は,人体の中では比較的小さな部位に見えますが,それぞれの機能を果たし器官として連係するために,実に多様かつ精緻な形態を備えていることに驚かされます.ビジュアルな工夫をこらした「構造と機能」の章(1・17・29・39章)は,イラストと文章を照らし合わせながらじっくりと理解し,後の章の疾患解説を学ぶ際にも,随所で立ち戻って,解剖生理の確認のために活用してください. 検査,治療・処置は,各診療科で行う特徴的なものに絞って解説しました.疾患の解説は,網羅的でありながら要点を押さえた記述とし,必要に応じて用語解説やplus αで周辺知識を補いながら学び進められる構成としました.多臓器性・全身性に症状がみられる疾患(ベーチェット病,単純疱疹,帯状疱疹,サルコイドーシスなど)は,本書の中で複数の記載がありますが,各診療科の視点を統合することで多角的な学びにつなげられるよう,相互の参照ページを付してあります.また,看護の学習において見る機会の少ない検査画像や症例写真を著者のご厚意で数多く提供いただき,約350点掲載しました. 看護については,各領域で特徴的な看護と,代表的な疾患をもつ患者の看護事例を掲載しました.ますます重要となってくる多職種連携の一例として,28章「進行喉頭癌患者の看護」では,専門看護師や認定看護師へのコンサルトはもちろんのこと,患者の職場復帰を支えるため理学療法士,ソーシャルワーカー,社会保険労務士,患者会などと連携し患者のセルフケアを確認していく事例を紹介しました. このほか,どの領域にも共通する看護の理論と技術は,ナーシング・グラフィカシリーズ「基礎看護学」「成人看護学」各巻を参照していただけると幸いです. 本書を存分に活用し,病態・症状・疾患の関係の理解を深めるとともに,患者と家族のQOLを支える看護への具体的な学びにつながることを期待しています. ナーシング・グラフィカ編集室はじめに

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