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 自分の意思で動かせる唯一の器官,それが“運動器”といわれています.その運動器に疾患が生じたとき,思い通りに動かせない身体を抱えた患者に,私たちは何ができるでしょうか.動くことは人が生きている限り24時間365日,休まず必要になる機能です.また,運動器疾患は完治する疾患もあれば,障害が残る,あるいは死に至る疾患もあります.一つの疾患がQOLに大きく影響するといえます.こうした運動器疾患とその看護を皆さんにわかりやすく伝えるためにはどうすればいいか.編集会議,教員・臨床の方や学生たちの意見も踏まえて,本書が完成しました. 本書のコンセプトとしては,“見てわかる運動器”を目指しました.自分の意思で動かせる器官なのに,言葉では伝わりにくい部分がある骨,筋肉,関節,神経の構造や動きを図やイラストを用いて表現しました.時には,あえて簡素化したイラストにすることで,より私たちの日常の動きや構造がイメージあるいは理解しやすくなるように工夫をしています.また,医師と看護師が協働で執筆することで,医師には「なぜ動かないのか」「どうすれば動くようになるのか」という視点で,疾患の原因・病態・検査・治療・予後について解説していただいています.看護師には「思うように動かせない不自由を抱える患者をどう支援するか」という視点で,発症から退院後まで,治療状況に応じた心身の変化とその看護について解説していただきました.医学と看護の両面から解説することで,根拠に基づく理解につながると考えています. 思うように動けない患者を対象に看護するため,検査の段階から検査体位がとれないなどの困りごとが生じます.さらに,治療や処置でも同様です.障害が残る疾患では,精神的にも動揺することから,心身ともに支え,家族を含めた包括的な支援の必要性についても述べています. 超高齢多死社会の中で,重要視されているフレイルやサルコペニアについても取り上げており,運動器疾患との深いかかわりが理解できると思います.巻末には,急性期と回復期から在宅支援まで,事例を通して解説し,各疾患の章末には実際の臨床場面とのつながりを考えられる設問を掲載することで,より身近に運動器疾患をとらえやすいように工夫しました.皆さんの看護の一助になることを願うとともに,今後,本書をより充実したものにするため,読者の皆さんからのご意見をいただければ幸いです.編者を代表して 山本恵子はじめに

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