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5腎不全急性腎不全1acute renal failure1急性腎不全とは 1 病態 急性腎不全は,数時間~数日単位で腎機能が低下することによるさまざまな症状を来す病態とされるが,明確な定義はない.近年は,より早期の段階で腎障害をとらえ,迅速に予防・治療を行う重要性が強調され,急性腎障害(acute kidney injury:AKI)という概念も普及しつつある.急性腎不全は,腎血流量低下による腎前性急性腎不全,腎自体の障害による腎性急性腎不全,尿路の閉塞による腎後性急性腎不全に大別される(表5-1).腎前性急性腎不全 腎への血流量低下により,糸球体濾過量(glomerular ltration rate:GFR)が低下した状態で,腎自体の障害ではない.尿細管機能は保たれ,基本的には病理的変化はなく,早期の治療で可逆的である.腎血流低下の原因として,脱水,出血,利尿薬の過剰投与,下痢・嘔吐などによる循環血液量の減少,心筋梗塞などによる心拍出量の低下などがある.また,ネフローゼ症候群,肝硬変といった低アルブミン血症で血管内から血管外に体液が移行することによる有効循環血液量の低下や,降圧薬の過剰投与,敗血症などで血管が拡張し,腎循環が悪化することで腎前性急性腎不全につながる場合もある.表5-1■急性腎不全の分類と原因分 類原 因原因の詳細腎前性腎血流低下●脱水(下痢,嘔吐,発熱,利尿薬使用),出血,外傷など●心拍出量低下(心筋梗塞,心タンポナーデなど)●低アルブミン血症(ネフローゼ症候群,肝硬変など)●ショック(敗血症など)腎 性腎実質障害●尿細管間質障害型(ATNの場合) ・虚血性(腎前性急性腎不全からの移行) ・腎毒性  内因性:ミオグロビン,ヘモグロビン,ベンス・ジョーンズタンパクなど  外因性:  造影剤,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs),アミノグリコシド系の抗菌薬,シスプラチン,パラコートなど●糸球体障害型  原発性あるいは続発性の糸球体腎炎など●血管障害型   溶血性尿毒症症候群(HUS),血栓性血小板減少性紫斑病(TTP), 播種性血管内凝固症候群(DIC)など腎後性尿路閉塞●下部尿路閉塞  前立腺肥大・癌,神経因性膀胱,子宮癌など●両側性の尿管閉塞  後腹膜線維症や悪性腫瘍の後腹膜・骨盤内浸潤63

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