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 本書は「腎・泌尿器系」「内分泌・代謝系」を対象としています.そのため非常 に膨大な病態生理学的な知識と,それに基づいたアセスメントや具体的なケアについて記されています.さらに双方とも非常に専門性が高い分野です.例えば「腎・泌尿器系」については,薬物療法や手術療法によるボディイメージの変化に対するケアや,対象となる部位が羞恥心を誘発させるため,その配慮が重要となります.また「内分泌・代謝系」については,例えば糖尿病の場合,患者自身による血糖コントロールが極めて重要となり,知識だけではなく手技の獲得に向けた患者指導も必要となります. 一方,「腎・泌尿器系」「内分泌・代謝系」の疾患に共通する事項もあります.それは"慢性疾患"であるということです.慢性疾患は病気を克服し完治させることよりも,病気とともに生きることを支えるケアが主体となります.例えば食事療法について考えてみましょう.腎不全の場合は水分・塩分・タンパク質制限,糖尿病ではエネルギー制限のある食事療法を指導しますが,生活の中で食事内容の質や量を制限しそれを維持するのは,患者に極めて強いストレスを強いることになります.しかし双方の疾患とも比較的自覚症状に乏しく,人間ドックや健康診断などで発見されることが多いため,初期には疾患を受容することが困難な患者が多いということも共通しています.上記の通り慢性疾患は病気とともに歩むことが基本となるため,病気を受容し病気とともに生きる覚悟ができて初めて,自身で食事,ひいては疾患のコントロールが可能となります.しかしコントロールが不良になった場合は,多種多様な合併症を生じるリスクが高く,QOLや生命に多大な影響を及ぼすことも少なくありません. 看護師はこうした前提を踏まえ,病気とともに歩む患者の傍らにおいて,その歩みに連れ添う存在であることが重要です.そのためには,看護師自身が疾患の病態生理を十分に理解することも重要ですし,患者に関心を寄せ,常に不安や悩みを傾聴するケアリングの姿勢も求められます. 通常,教科書は学生の時に読むものというイメージがありますが,本書は職業人になった後も,多くの学びを与えてくれる本を目指しました.それぞれの領域の医師や看護師から,将来,自分たちとともに働くであろう学生の皆さんに向けた,自分たちのもっている知識を余すところなく伝えたい,「腎・泌尿器系」「内分泌・代謝系」に関心をもってもらいたい,看護師になったら一緒に働こう!……そんな温かな思いが詰まった教科書となっています.基礎的な知識の習得に役立つことはもちろんですが,これらの疾患をもつ患者と出会ったとき,本書が指南書となり,ケアの方向性を指し示してくれることでしょう.編者一同はじめに

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