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は,家族を看護の対象として位置づけ,家族が必要としているケアを十分提供し,家族のエンパワーメントを支援する 4). 「子どもの権利条約」では,親(家族)は,第一義的な養育者として位置づけられている.国は,親が「子どもの養育および発達に対する第一義的責任を果たせるように積極的に援助する.子どもの最善の利益の見地からして,親がこの責任を果たしえない場合には,国が必要な措置を講じる」としている.看護者は,専門職として子どもの権利を擁護するとともに,親(家族)が養育責任を果たすことができるように支援していく責務を担っている. 家族中心ケア(family centered care)は,子どもへのヘルスケア提供システムの中心に家族を位置づける新たなヘルスケアの理念とサービス提供のあり方である.家族は,ケアの計画・実施・評価のすべてに参画し,家族と専門職との協働により最良の実践を行うとともに,専門職は家族の能力や強さを尊重し,家族のニードを充足するための情報やサービス,支持を提供していくというものである.家族中心ケアは,社会・文化的背景の異なる米国で誕生したものであり,わが国に導入するにあたっては検討する必要があるが,現在の医療状況や家族機能の低下した現状も踏まえて,子どもにとっての最善の利益となる医療を提供するために,家族をヘルスケアシステムにどのように位置づけていくか,どのような条件を整えていくか,今後,検討する必要がある 12).(4)コラボレーション 「子どもの権利条約」を指針にしながら,子どもの最善は何かを考え,子どもの権利を擁護していきたいと考えた場合,看護者は他の専門職とともに学際的なアプローチを行う必要がある.すなわち,異なる専門性をもつ専門職者が,“子どもの最善の利益”という共通の目標に向かって,限られた期間内に,直面している子どもの健康に関わる問題の解決に向けて活動を展開すること(コラボレーション)が重要である 13).言うまでもなく,コラボレーションは専門職者だけで行うものではない.子どもと家族とともに行うものであり,中心にいるのはあくまでも子どもであることを忘れてはならない.伝統的に家族主義が根強い日本の文化の中で,“子どものことは,家族に尋ねるのが当たり前”“家族に説明すると,家族が子どもに説明してくれる”という意識が,専門職者の中に根強く残っている 14,15).そのため,子どもが知らないうちに,家族と多くの専門職者が話し合い,いろいろなことが決まってしまうといった状況が生じる危険性がある.子どもに直接話を聞き,子どもの意思を確認することが重要である.その上で,家族はどうしたいのか,私たち専門職者は,それぞれの専門的立場から何が子どもの最善だと考えるのか,一緒に意見を出し合いながら考えていくことが重要であろう.(5)エビデンスに基づく小児看護の実践 子どもを取り巻く社会は,育児不安や児童虐待,小児救急医療の未整備,医療費抑制のための入院期間の短縮,支援体制が整っていない状況での在宅医療へのシフト,小児医療の不採算性に伴う小児病棟の縮小・閉鎖による小児医療水準の低下など,多くの問題を抱えている.小児看護に携わる看護者は,このような厳しい状況の中で,コラボレーション異なる立場にある者同士が,共通の目標に向かって限られた期間内に,お互いの限られた人的・物質的資源を活用して,直面する問題を解決していくために対話と活動を展開していくこと.151小児看護学で用いられる概念と理論

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