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わって権利を行使する.「子どもの権利条約」を指針として,看護者が子どものアドボケイト(権利の擁護者)として,子どもの権利を尊重した看護を実践するということは,一人ひとりの子どもが権利を行使する主体者であること,“主体は子どもであり,家族ではない”ということを看護者が十分理解し,54カ条の子どもの権利を,日常的な看護ケア場面で一つひとつ丁てい寧ねいに擁護していくということである.子どもと信頼関係を形成し,子どものニーズを明らかにし,子どもの最善の利益を考慮して,子どもの抱えている問題の解決に向けて,子どもや家族と話し合いながら取り組むこと,子どもに役立つサービスをコーディネートしたり,他の専門職者とともに問題解決に向けて取り組んでいくこと,すべての子どもが最高のケアを受けることができるように,エビデンスに基づいた看護を提供していくことにより,子どもの権利を擁護していく 10).日本小児看護学会は,小児看護の日常的な臨床場面での倫理的課題について,行動指針を示している(表1.1-2).この指針を活用しながら,一人ひとりの子どもの声,家族の声に耳を傾け,子どもの権利が守られているだろうかということについての看護者の倫理的感受性を高めていくことが重要である.(2)子どものセルフケアの支援 健康レベルにかかわらず,子どもは年齢相応のセルフケアの支援を必要としている.看護者は,子どもが成長発達に伴いセルフケア能力を発達させ,自ら健康問題に取り組んでいくことができるように直接働きかけたり,親(家族)が子どものセルフケア能力の発達に応じた関わりができるように,親(家族)が代行していたセルフケアを,セルフケア能力の発達に伴って子どもに移行することができるように支援する.健康障害を抱えている場合は,子どもが病気や治療を理解し,日常生活の中で療養法を実行できるように,セルフケア能力に応じた方法で教育する.子どもの発達とともに生じる新たなニーズを理解し,発達に適した方法で,病気や治療,療養法と日常生活のバランスの取り方などについて,適宜教育する必要がある 11). また,子どもが社会の一員として生きていくことができるように,身体のしくみや,病状の特徴,病院の特徴,病気をもつ人々についての社会の理解,交渉する方法などについて教育し,医療者や社会の人々と交渉する力を養うことができるように支援することも重要である. 家族に対しても,子どもの療養生活を支えていくことができるように,家族のセルフケア能力に応じた方法で援助する.療養法を継続し症状をコントロールしながら社会の中で生きていくことは,子どもにとっても,療養生活を支えている家族にとっても容易なことではない.看護者は,子どもや家族の声に耳を傾けながら,一人ひとりの子どもの複雑なニーズを把握し,役立つ情報を提供したり,複数の専門領域のサービスをコーディネートし,子どものセルフケアを支援する.(3)小児看護における家族の位置付け 子どもの権利を擁護し,子どもにとっての最善の利益を守っていくには,子どものことをよく知っている“その子どもの専門家”である家族と,小児看護の専門的な知識や技術を有している看護者がパートナーシップを結び,互いの専門性を尊重しともに取り組んでいく必要がある.さらに看護者は,子どもが意見を述べ,意思決定に参14

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