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表1.1-2●日常的な臨床場面での倫理的課題に関する行動指針1)看護師の基本的姿勢 ①看護師の価値観や信念,態度が倫理的判断に多大な影響を及ぼすため,自分の傾向を認識しておくようにします.他者の価値観を知ることにより自分の価値観に気づくこともできます. ②医療者の価値観を押しつけないようにし,相手の価値観を尊重します. ③日本文化の影響(和を尊ぶ,お任せ,本音と建前など)や社会の変化(価値観の多様化,情報化社会など)を理解するようにします. ④子どもの権利に関する法律や政策,専門職の倫理規定などの知識を習得し,実践に活用できるようにします. ⑤日頃から倫理的感受性を磨き,臨床場面での倫理的問題に気づくよう努力します. ⑥医療や看護に対する哲学,倫理原則,専門職の倫理規定などを倫理的判断の指標とします. ⑦子どもは発達途上にあるため,理解や判断,言語能力が未熟で,権利を十分に主張することが困難な場合があります.子どもの特性,起こりやすい倫理的問題を理解した上で,子どもの最善の利益とは何か,人として尊厳が守られているかを常に問いながらケアを行います. ⑧法律上,未成年の子どもは親権に服する年齢であり,法的判断の責任は家族にあります.したがって,実際に医療やケアを受けるのは子どもですが,意思決定の責任を負うのは家族(親権者)です.そのため,子どもと家族の意見が食い違うという問題が生じることもあるため,双方に慎重に関わる必要があることを認識し,実践してゆきます.2)具体的な取り組み(1)子どもに対する具体的な取り組み ①発達段階に合わせて子どもの思いや考えを十分に聴き,子どもを大切にします. ②効果的なコミュニケーションをはかり,信頼関係を確立します. ③子どもが理解し納得できるように十分に説明します. ④医療者だけで考えるのではなく,子どもと一緒に取り組みます. ⑤子どもが自分の意見を表明することや,意思決定するプロセスを支援します. ⑥子どもの日常生活に関心をもち,しっかりと観察します.気になったことはそのままにせずに子どもに確認する,もしくは観察を継続し,必要な対応を考えます. ⑦子どもが家族に気を遣い,本心を話すことができない状況もあるため,どうすることがよいのかを子どもと十分に話し合い,子どもの気持ちを尊重しながら,子どもの最善の利益を保障できる方法を検討します. ⑧子どもとの約束を守ります. ⑨子どもの安全を保障します.(2)家族に対する具体的な取り組み ①病気の子どもをもつことによる家族への影響を理解しながら,思いや考えを十分に聴き,家族を大切にします. ②家族との効果的なコミュニケーションをはかり,信頼関係を確立します. ③医療者だけで考えるのではなく,家族と一緒に取り組みます. ④子どもの病気や治療などを理解し意思決定できるように,家族に十分に情報提供を行います. ⑤家族の思いを受け止めながら,意思決定するプロセスを支援します. ⑥各々の家族がおかれている状況の違いを理解し,共感的に関わるように努めます. ⑦子どもと家族が,お互いの思いや考えを理解し合い,納得できる選択ができるように調整を行います.子どもが家族に気を遣い,本心を話すことができない状況もあることを家族に伝え,子どもにどのように関わるとよいかを一緒に考えます. ⑧家族の体調や疲労に配慮し,基本的欲求を満たす支援ができるように努めます.(3)医療チームにおける具体的な取り組み ①子どもの権利を擁護する役割を果たします.常に子どもの立場に立って発言をします. ②倫理的問題に気づいた場合,見過ごさずに声に出して周囲に伝え,チームで話し合い検討することでよりよい方法を見つけます. ③臨床ではどのような倫理的問題が起こっているのかについて,定期的に話し合う機会をもちます. ④問題が困難ですぐに解決できないとしても,現実的に何ができるのかをチームで一緒に考え,子どものためによりよい方法を模索します.そして,子どもにとってよりよいことだと納得できるプロセスを経て決定します. ⑤問題が困難で解決できない場合,無理だと諦めるのではなく,短期的な目標と長期的な目標を掲げ,計画的に進めます.例えば,子どもにとってよいケアであると分かっていても,病院のシステムの問題で実践できない場合,今できる最善のケアを模索し提供する一方で,システムを変えていくためにはどうすればよいかという長期的なプランを立てて実施します.また,必要に応じて院内の倫理委員会や第三者機関を活用する方法も検討します.日本小児看護学会倫理委員会.小児看護の日常的な臨床場面での倫理的課題に関する指針.日本小児看護学会,2010,p.2-3.151小児看護学で用いられる概念と理論

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